好きな人がいる。相手からも、好きだと言ってもらえた。
それなのに、週末の予定は決まっていない。
「誘ってくれたら、私も会いたいって言おう」
「もっと優しくしてくれたら、私も素直になれるのに」
相手から届くものを待っている間、自分の中にある愛情も、渡さずに止めてしまう。
もし、相手も同じように待っていたら。
ふたりとも会いたいのに、会う予定が生まれないまま、また一週間が過ぎていきます。
このシリーズでは、その日常から、ひとつずつ言葉や行動を選んできました。
最後は、もう一度、週末の予定を考えるふたりの場面へ。
好きな気持ちを、ふたりが過ごす時間へつなげるには、どんなやりとりができるでしょうか。

いらっしゃい。Emiの恋カフェへようこそぉ。
今日は、第1シーズンの最後のお話だよぉ。
私の「会いたい」も、相手の「こうしたい」も、ふたりの時間にしていきたいなぁ。
一緒に、次の週末を考えてみよっか。
「誘ってくれたら」の先に、私の希望がある
たとえば、こんなふたりを想像してみてください。
金曜日の夜。ひとりが、恋人とのメッセージを開きました。少し前までは、相手から誘われるまで、自分も予定の話を出さずにいました。
自分ばかり会いたがっているように見えたら、少し寂しい。断られたら、どう返せばいいか分からない。そんな気持ちは、今もまったくなくなったわけではありません。
けれど、今日は自分の希望を言葉にします。
「今週、会いたいな。土曜のお昼、一緒にお茶しない?」
相手の気持ちを確かめるために、返信をわざと遅らせたり、別の人と出かける話で反応を見たりする前に、会いたい相手へ、会いたいと伝えてみる。
相手からは、こんな返事が届きました。
「土曜は予定があるんだ。日曜の午後なら会いたい」
誘った側は、「土曜は難しいんだね。日曜、私も大丈夫」と答えます。相手も、自分が参加できる日時を出しています。
最初の案がそのまま通ったわけではありません。それでも、ふたりの中にあった気持ちが、同じ予定へ向かい始めました。
自分から誘うことは、相手の答えを決めることではありません。自分の希望を隠さずに渡し、相手にも選んでもらうことです。相手の返事に希望があるなら、そこから一緒に続きを考えられます。



ちょっと照れちゃうけど、「私は会いたい」って言ってみたいなぁ。
「日曜なら会いたい」って返ってきたら、その気持ちも受け取りたい。
ふたりで予定ができていくの、嬉しいねぇ。
届いた温かさを、嬉しさとして返す
会う日が決まったあと、恋人が「誘ってくれて嬉しかった」と伝えます。
そこで、「でも、私が言わなかったら誘ってくれなかったよね」と、足りなかったものを探したくなる日もあるかもしれません。
自分からも誘ってほしいという希望は、話してよいものです。同時に、今届いた「嬉しかった」も、相手が渡してくれた気持ちです。
「そう言ってくれて嬉しい。私も楽しみ」
まず、自分に本当にあった嬉しさを返してみます。評価の点数をつけるように相手を褒める必要はありません。自分の気持ちとして、何が嬉しかったかを伝えます。
もし、相手からの誘いも欲しいなら、別の希望として話せます。
「あなたから誘ってもらえるのも嬉しいから、行きたいところがあったら教えてね」
届いたものを受け取ることと、まだ欲しいものを伝えることは、一緒にできます。
相手も「それなら、気になっているお店があるよ」と、自分の希望を出しました。誘った側は、お店の写真を見て、「そこ、私も行ってみたい」と答えます。
喜びを返すために、別の喜びを必ず用意しなくてはいけないわけではありません。何か嬉しかったとき、その実感を隠さず伝えられると、ふたりは、自分が渡したものがどう届いたかを知れます。
日程の調整も、お店の提案も、ひとりの愛情の証明にせず、ふたりがしたいこととして持ち寄っていきます。



その言葉、嬉しい。
そう思えたら、そのまま言ってみたいなぁ。
相手が見つけたお店のお話も聞いて、私も「行きたい」って伝えたいよぉ。
その日のふたりに合う過ごし方を選ぶ
日曜日の朝、恋人から連絡が来ます。
「昨日、少し忙しくて疲れてる。会いたいけど、今日は長く歩けないかも」
誘った側は、会うなら元気いっぱいでいてほしい、と願うかもしれません。楽しみにしていたことがある分、予定を変えるのが残念な日もあります。
そこで、「楽しく過ごせるようになってから会おう」と相手の元気を条件にする前に、今日できることを聞いてみます。
「疲れてるんだね。駅の近くで、短めにお茶するのはどう?」
相手は、「それなら会いたい。今日は一時間くらいだと助かる」と答えました。誘った側にも、ゆっくり話したいという希望があるので、「私も座って話せると嬉しい」と伝えます。
今日はお茶をする。歩いて回りたかった場所は、また相談する。
予定を縮めても、そこにふたりの希望を入れられます。
会ったら、元気のない方が、相手を楽しませる役を引き受けなくても構いません。静かに飲み物を味わいながら、「こうして会えたの、嬉しい」と伝えられるかもしれません。
話す側、聞く側を固定せず、その日のふたりにできるものを渡していく。片方が休みたいなら、会わずに別の日を考えることもできます。
元気が少ない日にも愛情を渡せることと、どんな日にも必ず会うことは別です。ふたりが実際に選べる時間から、好きな気持ちを育てていきます。



今日は、短めにお茶しよっか。
私も、ゆっくりお話しする時間が欲しいなぁ。
相手の様子も、私の気持ちも聞きながら、今日の楽しみを選んでみたいよぉ。
すれ違ったら、気づいたところから言い直す
会っている間、相手がふと時計を見ました。
話していた側は、「もう帰りたいのかな」と感じます。
相手が疲れているのは分かっている。それでも、話している途中だったので、少し寂しくなりました。
ここで、「やっぱり会わなければよかった」と全部を閉じる前に、今の気持ちを確かめてみます。
「あと、どのくらい話せそう? さっき時計を見たから、続けていいのか気になったんだ」
時計を見た恋人は、「帰りの時間を気にしてた。急がせた感じになったね。あと十分くらいなら話したい」と答えます。
話していた側も、「教えてくれてありがとう。それなら、これだけ聞いてもらえる?」と、残りの時間で話したいことを選びます。
相手が、その説明をしてくれるまで、気持ちを全部決めなくてもよい。聞く側も、気づいたことを自分から言葉にできます。
うまく言えなかったときは、「今の言い方、少し違った。私はもう少し話したかったんだ」と、願いへ言い直すこともできます。
小さなすれ違いが一度も起きないことを、恋愛の合格条件にしない。起きた場面で、自分の気持ちと相手の事情を持ち寄り、次にできることを探します。
帰り際には、相手から「短かったけど、会えてよかった」と言葉がありました。もうひとりも、「私も。話を聞いてくれて嬉しかった」と返します。
寂しさがあったことも、嬉しかったことも、同じ日の中にあります。ふたりが言い直してつくった時間も、一緒に受け取っていきます。



少し寂しくなったら、そのこともお話ししたいなぁ。
相手がどうしていたかも、聞いてみたい。
それでまた話せたら、「聞いてくれて嬉しかったよぉ」って、私の気持ちを返したい。
無条件の愛情と、ふたりの参加を大切にする
この週末に、ひとりがしたことは、相手を動かすための取引ではありません。
会いたかったから誘った。
嬉しい言葉が届いたから、嬉しさを返した。
寂しさがあったから、希望を伝えた。
相手も、会える日を提案し、行きたいお店を出し、話せる時間を伝えました。どちらにも、自分から参加する動きがありました。
本シリーズで考える「無条件に与える愛」は、愛情の一つひとつを、次の返事や行動の引換券にしないことです。
「誘ったんだから、断らないで」
「優しくしたんだから、私の願いをかなえて」
そんな、あとからの請求にしない。
一方で、会うかどうか、何を一緒にするか、どこまで時間を使うかは、その都度ふたりが選びます。互いの希望や余力は、愛情があるからこそ話したいことです。
受け渡すものが、毎回同じ形や同じ量である必要もありません。誘いに対して、別の日の提案が返ってくる。話を聞いてもらったあと、別の場面で相手の楽しみに参加する。ふたりに合う形を知っていきます。
ただ、自分が温かくしたら、相手も必ず同じように応じるという約束はありません。自分の伝え方を変えても、相手が望む関係や、参加したい範囲は別です。
誘い、相談、言い直しに、相手からも関わろうとする動きがあるか。実際のやりとりを見ながら考えます。片方だけが全部を担っているなら、さらに努力することだけを答えにせず、その関係を続けたいかも含めて選び直せます。
長く続くことだけを、恋愛の成功にしなくてよいのです。ここで育てたいのは、ふたりが一緒にいたいと選び、気持ちを渡し合える日常です。



私は、好きだから渡したい。
相手からの「私もこうしたい」も聞いて、一緒に時間をつくりたいなぁ。
そのふたつを大切にしながら、ふたりの恋を育てていきたいよぉ。
好きの先を、今日のひとつから育てる
第1シーズンでは、両想いになった後の、小さなやりとりを考えてきました。
良い対応を待ちながら、自分の愛情まで止めていないか。
相手を試す前に、本当の希望を伝えられないか。
届いた好意を、嬉しさとして受け取れているか。
元気のない日にも、今できる温かさを渡す。ふたりの希望を持ち寄る。すれ違ったら、どちらからでも言い直す。
これらを、全部いっぺんに上手にできなくても構いません。今日の自分が使いたいひとつから、実践できます。
今、私が渡したいものは何でしょうか。
相手から受け取って、嬉しかったものは何でしょうか。
ふたりで相談したいことは何でしょうか。
会いたい気持ちがあるなら、ひとつ誘ってみる。嬉しかった言葉があるなら、その嬉しさを返す。心に残ることがあるなら、話せる時間を相談してみる。
そして、相手からも届く気持ちや提案を聞いて、次を一緒に選ぶ。
少し前までは、ふたりとも相手の誘いを待っていた週末。今日は、ひとりが誘い、もうひとりが別の日を提案し、お互いの希望から会う予定ができました。
同じ週末でも、ふたりが渡した言葉で、過ごせる時間は変わります。
愛する気持ちは、自分の中にある。
愛し合う時間は、ふたりで選び、つくり、育てていく。
相手の愛情に応じる準備だけでなく、自分にも今ある温かさを渡す。その先を、一緒に考えられるふたりでありたいと思います。



私は会いたい。お話ししたい。
あなたと過ごせて、嬉しかった。
そんな気持ちを、これからも言葉にしていきたいなぁ。
好きの先を、ふたりで育てていこうねぇ。
Emiの恋カフェで、一緒に考えてくれてありがとう。
また、あなたの恋のお話をしようねぇ。











