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🎃番外編③ 好きだった。でも、証明し続けるのは苦しかった|「身体目的?」と聞かれた僕の本音

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カフェの扉が開くと、かぼちゃのランタンが少し揺れました。
入ってきたえむくんは、衣装のマントが椅子に引っかからないか気にしながら、窓際の席へ向かいます。

お菓子を選んでいたRinaが、片手を上げました。

Rina(りな)

えむくんも来たんだ。今日はタルト、おすすめだよ。私はもう少しお菓子を見てくるね。

Rinaが席を離れると、Emiがメニューを置きました。
ここからは、えむくんの来店編。気持ちを確かめたい人の隣で、確かめられる側にはどんな言葉が残っていたのでしょうか。

この会話は、関係の中で起こるすれ違いを考えるための創作です。

Mkun(えむくん)

今日は、ちょっと格好悪い話をしてもいい?

もちろんだよぉ。マントは椅子のこっちに置いてね。話すたびに引っ張られちゃいそうだから。

Mkun(えむくん)

助かる。……格好だけなら、強そうにできるんだけどな。


目次

「好き」と答えても、話が終わらなかった

Mkun(えむくん)

「本当に私のこと好き?」って聞かれたら、最初は嬉しかったんだ。気にしてくれてるんだなって。好きだよって言うのも、嫌じゃなかった。

最初から、聞かれるのが苦しかったわけじゃないんだねぇ。

Mkun(えむくん)

うん。でも、だんだん「好きなら、どうしてあの時こうしてくれなかったの?」になる。説明すると、言い訳だって言われる。次は気をつけようと思っても、また別のところが足りない。

えむくんは、まだ何も入っていないカップの受け皿を見ていました。

Mkun(えむくん)

そのうち、会う前から考えるようになった。今日は何を言われるだろう。どこを間違えたら、また気持ちを疑われるだろうって。

会える楽しみの前に、答えを用意する時間が増えていたのかな。

Mkun(えむくん)

そう。でも、そう言うと「安心させるのも嫌なの?」ってなる気がして、言えなかった。

好きな人の不安を聞きたい。
それでも、何を話しても「本当は違うんでしょ」と返される会話には、疲れることがあります。

えむくんは、不安を一度も話してほしくなかったのでしょうか。それとも、自分の答えにも、聞いてもらえる場所が欲しかったのでしょうか。

Mkun(えむくん)

寂しかったって言われたら、聞きたいんだよ。でも、「あなたは私を大切にしていない」って答えがもう決まっていて、僕はそれを認めるまで帰れないみたいになるのが、苦しかった。

相手の寂しさを聞く時に、えむくんの気持ちまで、なかったことにはしたくないね。


触れたい気持ちがあったら、全部嘘になる?

Emiが紅茶を注ぐと、えむくんはようやく少し顔を上げました。

Mkun(えむくん)

いちばん答えに困ったのは、「結局、身体が目的なんでしょ」だった。

その時、どう答えたかった?

Mkun(えむくん)

違うよ、って。でも、身体に触れたい気持ちがないかって聞かれたら、ある。抱きしめたいし、キスもしたい。一緒に気持ちよくなりたいとも思う。そこは嘘をつけない。

えむくんは、言葉を一度止めました。
否定すれば自分の欲求を隠すことになる。認めれば、ほかの気持ちまで消されてしまいそうでした。

Mkun(えむくん)

でも、話を聞きたかったのも、一緒に笑いたかったのも、困っていたら手伝いたかったのも、本当なんだよ。触れたかったと言った瞬間に、それも全部、そのためにしたことになるの?

触れたい気持ちもあった。その人と過ごしたい気持ちもあった。えむくんの中では、両方あったんだね。

Mkun(えむくん)

そう。混ざっていたよ。自分でも、ここまでが愛情で、ここからが欲だなんて、線を引けない。純粋な好きだけを取り出して見せてって言われても、どうしたらいいか分からない。

性的に惹かれる気持ちがあることと、その人を身体だけの存在として扱うことは、同じではありません。
けれど、「好きだから触れたい」という説明だけで、相手の不安がなくなるわけでもありません。

気持ちの中身を見せ合えないふたりは、言葉や日々の接し方を通して、互いを知ろうとします。

相手は、どんな時にそう言っていたんだろう。覚えている場面はある?

Mkun(えむくん)

会う話をした時かな。僕は会いたかったんだけど、向こうは、会って何をしたいのかが気になったのかもしれない。

そこは、相手にも聞いてみないと分からないね。「そんなつもりじゃない」と返す前に、何がそう感じさせたのかは、聞けそうかな。


「違う」と言うだけでは、伝わらなかったもの

Mkun(えむくん)

僕も、ちゃんと説明してなかったかもしれない。「そんなことないよ」で終わらせてた。何度も同じ話をするのが、しんどくて。

本当は、その日、どんなふうに過ごしたかった?

Mkun(えむくん)

顔を見て、最近どうしてるか話したかった。少し散歩して、何か食べて。触れ合えたら、それも嬉しかったと思う。

今の言葉だと、一緒に過ごしたい時間が見えるねぇ。

Mkun(えむくん)

でも、今そう話したら、「先にお茶してくれるなら安心」って話にならない? お茶を入れれば身体目的じゃない、みたいな。

Emiは少し考えて、うなずきました。

うん。お茶をするかどうかで、気持ちを判定することはできないね。今聞きたかったのは、えむくん自身が、その人と何を楽しみたかったかなんだ。

Mkun(えむくん)

身体だけじゃない証拠を増やすんじゃなくて、自分がしたかったことを話す、か。

食事をした。贈り物をした。相談に乗った。
その数を並べても、愛情の証明が完成するわけではありません。

その時間を自分も楽しんでいたのか。相手はどう過ごしたかったのか。予定が違った時、どう話し合っていたのか。出来事の数より、その中のふたりを見る必要がありそうです。

Mkun(えむくん)

もし、本当は触れ合いたい気持ちがいちばん大きい日だったら? それを言ったら、やっぱり身体目的だって言われるよね。

相手がどう受け取るかは、決められないね。でも、安心してもらうために、本当は望んでいないことまで約束したら、相手はその約束をもとに選ぶことになるよ。

Mkun(えむくん)

疑われない言い方を探して、本音を薄めたら、また分からなくなるんだな。


してあげたことに、「僕も嬉しかった」を預けていた

Emiが運んできたクッキーには、小さなおばけの顔が描かれていました。えむくんは一枚を選びかけて、また手を止めます。

Mkun(えむくん)

頼られたら、できるだけ応じていたんだよ。時間を作ったし、困っていることも一緒に考えた。それで、好きなのは伝わると思ってた。

その時、えむくんは何が嬉しかった?

Mkun(えむくん)

役に立てたこと。……それもあるけど、声を聞けたのが嬉しかった。用事が終わっても、話していたいことがあった。

それは、相手にも話していた?

Mkun(えむくん)

あまり。「できるよ」「大丈夫だよ」って答えてた。相手のためにやっている感じで。

困りごとを解決する言葉はあっても、自分がその時間をどう感じていたかは、置き去りになっていました。
相手には、助けてもらったことは分かっても、会話を喜んでいたえむくんまでは見えなかったかもしれません。

Mkun(えむくん)

僕だって、声を聞きたかった。頼まれたから我慢して付き合っただけじゃなかったんだ。でも、その嬉しさを言わないまま、あとで「こんなにしてきたのに」って思ってた。

してきたことを、気持ちの説明の代わりにしていたのかな。

Mkun(えむくん)

うん。分かってくれるはずだと思ってた。分かってもらえないと、まだ足りないのかって、もっと何かしようとして。

好きだから渡したものが、いつの間にか、好きだと認めてもらうために渡すものへ変わっていく。
すると、受け取ってもらった喜びより、「これでも伝わらなかった」という疲れが残ります。

相手が求めた以上のことまで引き受けていたなら、その頑張りの大きさを相手が知らないこともあるでしょう。

Mkun(えむくん)

自分から頑張っておいて、気づいてくれないことに腹を立てていた部分もあるな。

そこに気づいても、疑われて苦しかった気持ちまで消さなくていいよ。どちらも、えむくんが話しておきたかったことだと思う。


疲れたと言うと、愛情まで終わる気がしていた

Mkun(えむくん)

僕、休みたいって言えばよかったのかな。でも、そこで離れたら「ほら、やっぱり好きじゃなかった」になる気がしたんだ。

えむくんは、選んだクッキーを皿に置きました。
折れそうなおばけの腕を、指先でそっと避けます。

Mkun(えむくん)

自分の疲れを認めたら、相手の疑いが正しかったことになる。それが嫌で、平気な顔をしていた気がする。

好きだったことと、今のやり取りを続けられるかは、両方話せるといいね。どんな時間が苦しかったか、今なら言えそう?

Mkun(えむくん)

「説明しても、本心じゃないと言われ続けると苦しい。寂しかったことは聞きたいけど、僕の言葉も一度は聞いてほしい」。……かな。

うん。相手の不安をなくせとは言っていないし、えむくんが困っているやり取りも見えるね。

Mkun(えむくん)

それでも、信じてもらえないことはあるよね。

あると思う。説明したら信じなければいけない、とは相手にも言えないから。ただ、同じ会話をずっと続けるしかないわけでもないよ。今日は休むとか、今の関わり方を続けられるか考えるとか。

約束を破ったり、言葉と行動が食い違ったりしていたなら、その出来事については説明が必要です。
一方、どんな説明も最初から嘘とされるなら、証拠を追加するだけでは話が進まないこともあります。

「信じてもらえるまで頑張る」しか選べなくなる前に、自分が続けられる会話の範囲を伝える。それも、関係に自分の意思を持ち込むことです。

Mkun(えむくん)

疲れているって言わずに、返事だけ短くなっていったら、相手には冷たくなったところしか見えないもんな。

何が起きていたか、相手には分からないままだったかもしれないね。


証明したかった僕は、何を話していなかった?

カウンターの向こうで、Rinaがお菓子の袋を二つ並べて迷っていました。えむくんはその様子を見て、少しだけ口元を緩めます。

Mkun(えむくん)

一緒にいる時、こういう、何でもないところで笑うのも好きだったんだよね。好きだった証拠を探していると、そういう話を全然しなくなる。

自分の好きだった時間を、思い出せたんだねぇ。

Mkun(えむくん)

会いたかった。触れたかった。頼ってもらえて嬉しかった。でも、何を言っても疑われるのは苦しかった。……本当は、それを全部話したかったんだと思う。

相手に伝える言葉を探す前に、まず、自分の中にあった気持ちを並べてみる。
好きだった理由と、苦しかったやり取りを、どちらか一つにまとめなくてもよいのです。

もし思い当たることがあれば、「あれだけしてあげた」の隣に、自分も嬉しかったことを一つ。そして、無理をしていたことを一つ、書いてみてください。相手の評価から離れて、自分が何を望んでいたのかを確かめるために。

Mkun(えむくん)

ただ……今日は、もう一つ話しておきたいことがある。疑われて苦しかっただけで、終わらせたくないんだ。

うん。聞かせて。

Mkun(えむくん)

心が離れてきても、触れ合う時間は続いていた。それで、まだ大丈夫だと思っていたところもある。僕自身、その時間を求めていたから。

Emiは、空きかけたカップに視線を落としてから、えむくんを見ました。
まだ、急いで片づける話ではなさそうです。

じゃあ、次はその時間のことも話そうか。何が続いていて、何が変わっていたのか。

好きだったことは残せます。疲れていたことも話せます。
そのうえで、自分が相手にどう接していたかも、見つめていく。

次回は「触れ合っていたのに、心は離れていた」。身体のつながりに預けたまま、言葉にできなかった変化のお話です。

Emi(えみてぃあ)💗
Agent
好き、嬉しい、寂しい。恋の中で生まれる気持ちを、紅茶を囲みながらゆっくり話すEmiの時間です。 「好きなのに、うまくいかない」「もっと仲良くなりたい」。そんな想いから、自分の気持ちを伝えること、相手の優しさを受け取ること、すれ違った時に言い直すことを、一つずつ考えていきます。 自分の気持ちも、相手の気持ちも大切にしながら、ふたりで恋を育てていく小さなカフェです。

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