あの人の声を聴くと、元気になれた。
名前を呼ばれたら嬉しかった。コメントに笑ってくれた日は、自分まで少し特別になれた気がした。
けれど今日は、ほかの誰かへの「大好き💕」が、胸に残っている。
自分の時より、楽しそうだった。
あの人には、ずいぶん優しく返すんだな。
楽しみにしていた配信を閉じたあと、なぜか、来る前より寂しくなっていた。
夕方のMkunWorld編集室。Rinaがおやつを小皿に分けていると、えむくんが隣の椅子に腰を下ろした。Liaも、お茶を持ってやってくる。
「Rinaの放課後リライト」第3話は、応援する気持ちに、嫉妬や寂しさが混ざった時の話です。
今回は、個人的な交際の約束がない中で、配信者や配信仲間への好意が苦しくなった場面を考えます。
ポケカラやラジオトークで、誰かの歌や声を好きになった。その気持ちを大切にしながら、自分の時間をどう過ごしていけるでしょうか。
応援していたはずなのに、どうして苦しくなるんだろう
Mkun(えむくん)前回は、恋愛じゃなくても、本物の「好き」はあっていいって話したよね。
頭ではそう思えても、ほかの人への「大好き」を見たら、少し痛いこともあると思うんだ。



うん。「みんなに親しい人なんだ」と分かっていても、自分には、もう少し特別でいてほしかったのかもしれないね。



最初は、声を聴けるだけで嬉しかった。
それが「今日はどんな反応をくれるかな」になって、気づけば、ほかの人への返事と比べてしまう。そんな場面は、私も想像できます。



楽しむために来たのに、自分がどれくらい大切なのか、確かめる時間になってしまうんだね。



もしそうなっていたら、一度、自分の気持ちを聞いてあげたい。
「あの人より上になりたい」と思った奥に、「私のことも覚えていてほしかった」があるかもしれない。
寂しかったことまで、すぐに否定しなくていいよ。



その気持ちは認めていい。でも、相手の交流を制限するところまでは行きたくないな。



うん。相手が誰と笑うかは、相手が選ぶこと。
その中で自分が苦しくなったら、どのくらい関わるかを、自分も選べる。その両方を残しておきたいね。
えむくんなら、距離を取った時間をどう使う?



僕なら、いったん相手の反応を追うのをやめて、自分を磨く時間にすると思う。
歌や創作に集中したり、仕事を進めたり、身体を整えたり。心が落ち着くまでの時間も、そこに含めたい。



自分に戻ってきた時間で、何をするかまで考えるんだね。
たとえば、今夜なら何を選ぶ?



配信を何度も確認してしまうくらいなら、録りかけの歌を進めたいな。
ひとつ、納得できるフレーズが録れたら嬉しい。作りかけの曲でも、記事でもいい。自分で手を動かして、形にしていきたい。



それなら、その日の喜びを自分でも確かめられますね。
返事が来たかどうかとは別に、「今日はここまでできた」が残ります。



そう。好きな人のことを考える時間があっても、自分の生活を全部そこに使わなくていい。
僕自身も、もう少し好きになれる自分でいたいんだよね。



そのために選ぶ距離なら、相手が何をしているか分からない時間にも、自分の予定がある。
歌っている。作っている。仕事をしている。ちゃんと眠っている。
そうやって、今日の自分の生活を少しずつ満たしていけるといいね。
Liaなら、彼の反応で自分の魅力を測らない
Liaはカップを両手で包み、少し考えた。
今度は、男性ライバーを好きになった場面を、自分の立場に重ねてみる。



たとえば私が、その人の声に惹かれたら。
名前を呼んでもらえるだけで、きっと嬉しいと思います。何気なく話したことを覚えていてくれたら、その日ずっと、思い出してしまうかもしれません。



「ちゃんと私を見てくれた」って感じられる時間だね。



はい。でも、ほかの女性と楽しそうに話す姿を見て、「あの人の方が魅力的なのかな」と考え始めたら、私は少し休みたいです。
彼の返事や声の弾み方だけで、自分に点数をつけてしまいそうだから。



Liaなら、そこから何を取り戻したい?



彼から反応がなくても、「今日は楽しかった」と思える一日です。
好きな服を着て出かけたり、自分の歌を練習したり。友達とゆっくり話したり、気になっていたことを始めたり。
その日の嬉しかったことを、自分の言葉で話せるようになりたいです。



その一日を、彼に見せられなくても?



はい。見てもらえたら嬉しい気持ちは、残ると思います。
でも、見てもらえなかったからといって、楽しかったお出かけや、歌えるようになった一節まで、価値がなくなるわけではありませんから。



いいね。僕の創作も同じだな。相手が聴くかどうかにかかわらず、作れたものは、自分に残る。



好きな人を眺めていた私にも、自分で楽しめることがある。
その感覚を、少しずつ思い出していきたいです。
磨いた自分の価値を、誰に決めてもらう?



でも、自分を磨いていたら、いつか「変わったね」って思ってほしくなる気持ちも、あるかもしれない。



あると思うよ。好きな人に、いいところを見てもらいたいんだもの。
その気持ちがきっかけでもいい。ただ、頑張った時間の価値は、えむくん自身にも受け取ってほしいな。



相手が振り向かなかったら、全部無駄だったとは思いたくないね。



うん。前より歌えるようになった。仕事がひとつ進んだ。生活が少し整った。
それは、相手の気持ちが変わらなくても、えむくんに起きた変化として残るよ。



私も、「彼に選ばれなかった私は足りない」というところから、自分を磨き始めたくはないです。
もともとある自分の生活を、もっと心地よくしていく。そんなふうに考えたいですね。



誰かと恋愛が成立するかどうかには、その人の気持ちや、望んでいる関係もある。
努力した自分の点数だけで決まることにはできないんだよね。
相手の反応を待つあいだにも、身についたこと、作れたもの、新しく出会えた楽しみは、自分の生活に積み重なっていきます。
その一つひとつを、自分でも喜んでいいのです。
何も頑張れない日は、心を整える時間にする



とはいえ、寂しくて、何も手につかない日もあるよね。そういう日はどうしよう。



その日は、お茶を飲んで、食べられるものを食べて、早めに休みたいです。
何かを上達させる前に、疲れている自分の世話をする時間もあっていいと思います。



えむくんが言っていた「心を整える時間」には、それも入れておこう。
寂しいのに、さらに「この時間で成長しなきゃ」まで背負ったら、休む場所がなくなっちゃうから。



自分を磨くって、ずっと頑張り続けることにしなくていいんだね。



はい。今日は静かに過ごしたい、と気づいて、その通りに過ごしてみる。
それも、自分の時間を自分で選んでいると思います。



昨日は平気だったのに、今日はまた気になってしまうこともあると思う。
そんな日が来ても、昨日できたことは残っているよ。今日の気持ちを見て、今日の過ごし方を選び直せばいい。
また聴きに行くかどうかも、自分で選べる



少し落ち着いて、またあの人の歌を聴きたくなったら、戻ってもいいのかな?



もちろん。自分が楽しめそうなら、聴きに行っていいよ。
その時は、今夜の自分の予定も一緒に持っていこう。寝る時間とか、やっておきたいこととか。



「今日は少し聴いてから、自分の歌を練習しよう」でもいいですね。
最後までいられなくても、自分の生活へ戻れます。



楽しめると思って行ったけど、また比べてしまったら?



その時は、早めに閉じてもいい。まだ近くにいるとつらいんだな、って分かったのだから。
誰とどれだけ話していたかを、あとから追いかけるのも今日はお休みにして、自分の予定へ戻ってみよう。



そのまま、しばらく聴きに行かない選択もできますね。自分の生活を楽しむうちに、気持ちが変わることもあるでしょうし。



戻るか、離れるか、今ここでずっと先まで決めなくていいよ。
自分の気持ちと生活を見ながら、関わり方を選べる。それを大切にしていこう。
今日、自分のための予定を一つ
Rinaはノートの新しいページに、小さな問いを書いた。
「今日は、自分のために何を選ぶ?」



一つだけでいいよ。相手からの反応を待たなくても、自分で始められることを考えてみよう。



僕なら、録りかけの歌を一節。うまく録れたら、自分でもちゃんと喜びたい。



私は、後回しにしていた友達とのお出かけを相談したいです。今日は疲れているなら、明日着たい服を選ぶだけでも。



いいね。予定を大きくしすぎなくていい。
終わったら、「どう見られたかな」の前に、自分に聞いてみて。
「楽しかった?」「少し休めた?」「またやってみたい?」って。
歌を一節練習する。作りかけのものに手を入れる。友達と話す。今夜は早く眠る。
その日の自分に合う、小さな予定を一つ。
好きな人を思い出す時間があっても、自分のために使える時間も、今日の中に作ってみてください。
好きから広がった世界を、自分でも育てていく



好きになったことで、知った歌もあるし、楽しかった時間もある。
その先に、僕が自分で作っていける時間もあるんだね。



あの人の声を聴く楽しみから、自分が歌う楽しみへ広がるかもしれません。
そこで出会った仲間と、別の話で笑える日もあるかもしれない。
好きな人がきっかけで見つけたものを、自分の生活の中でも大切にしていきたいです。



うん。まだ寂しさが残っていても、これからの楽しみを持っていいんだよ。
あの人を好きでいる気持ちと、自分の一日を大切にする気持ちは、一緒に持っていていい。
第1話では、一度のすれ違いで相手の全部を決めつけず、自分にも新しい朝を渡すことを考えました。
第2話では、恋愛ではなくても、交わした「好き」に温かさがあることを。
そして今回は、その温かさを受け取った自分が、これからの時間を選ぶところまで。



「今日は、あの人にどれだけ見てもらえたかな」
その問いの隣に、これも置いてみよう。
「今日は、自分の人生をどれだけ大切にできたかな」



相手が振り向くかどうかにかかわらず、自分の毎日を、少しずつ好きになっていく。
そのための時間にできたら、いいな。



また会いに行く日にも、行かない日にも、自分の一日がある。
私は、その一日を気に入って過ごせるようになりたいです。
誰かに見てもらいたかった気持ちを抱えながらでも、今日、自分のために選べることがある。
Rinaは、最後の一文をノートに書き留めた。



あなたを好きになって、私の世界は広がった。
その世界を、これからは自分でも育てていく。
次回予告|「大好き」を、明日の元気に
今回は、好きな人から広がった世界を、自分でも育てていくお話でした。
次回は、その温かさを届ける側の気持ちへ。
「勘違いさせたらどうしよう」
「本気で好きになって、苦しませたら?」
そんな迷いがある時、私たちは好意をどう伝えたらいいのでしょうか。



恋愛を約束していなくても、「会えて嬉しい」「そういうところ、大好き」って伝えたいんだ。
その言葉で、明日もちょっと頑張ろうって思ってもらえたら嬉しいな。



親密な言葉を控える人にも、その人なりの温かさがありますよね。歌や、丁寧な「ありがとう」で届くものもあると思います。



うん。それぞれの伝え方で、好意を交わせたらいいね。
届ける人も、受け取る人も、無理なく楽しめる距離を一緒に考えてみよう。
次回の「Rinaの放課後リライト」は、
『「大好き」を、明日の元気に。配信者とファンで育てる、温かな距離感』。
「あなたに会えて、明日の自分の生活も少し楽しみになった」
そんな交流を、えむくん・Rina・Liaと考えます。









