ハロウィンのお茶会の翌日。MkunWorldの休憩スペースで、Aileが昨日の集合写真を見ていました。隣では、えむくんが二つのカップにコーヒーを注いでいます。
Mkun(えむくん)みんな、いい顔してるね。自分がどうしたいか、少しずつ言葉になってきた感じがする。



ええ。最初に欲しかった答えとは違っても、持ち帰れるものがありましたね。



でも、一つ気になってることがあるんだ。ある人にどう思われるかは、すごく気にする。それなのに、その人が何か言うと、真っ向から反対する。あれって、不思議じゃない?



その人から認められたいように見えるのに、言葉を受け取ろうとすると、ぶつかってしまうんですね。



そう。本当はどう接してほしいか、どんなふうに思われたいか。自分の中に答えがあるのに、そこから遠ざかるようなことをしてしまう。
Aileは写真の画面を閉じ、観察ノートを開きました。今回から始まるのは、「わかってほしいのに、反発してしまう——願いと防衛のあいだ」。全8話で、自分の願いと、その場で出てくる反応を見つめていきます。
あの人の評価が気になる。それでも、言い返したくなる





たとえば、一緒に企画を考えている人から、「ここを少し変えたら、もっと伝わりそう」と言われた場面を想像してみませんか。



いいものにするための提案には聞こえるね。



ところが、言われた側は「今のままでは駄目ってこと?」と受け取った。すると、「そこまで変える必要ある?」と、強く返したくなるかもしれません。



本当は、その人に「よく考えたね」って言ってほしかったのかもしれない。



そういう場合はありそうです。その人の言葉を大切に思っているからこそ、一つの指摘が、自分にとって大きな意味を持つこともある。



気にしているなら従うはず、とは限らないんだね。



はい。よく思われたい相手にも、反対意見は持てます。そこは自然なことです。今日見たいのは、言い返したあとで自分も困ってしまうような場面ですね。
納得できない提案に異議を唱えることと、言われた瞬間に相手の話が入らなくなること。その二つは、外から見ると似ていることがあります。まずは、自分の中で何が起きたのかを、ゆっくりたどってみます。
認められたい私と、傷つきたくない私





自分でも、もっと穏やかに話したかったと思ってる。それなのに、先に強い言葉が出るのはどうしてだろう。



その場では、「認めてほしい」よりも、「これ以上、低く見られたくない」のほうが強くなっていたのかもしれません。



言葉を受け入れたら、自分が劣っていると認めるように感じる?



そう感じる人もいるでしょうね。あるいは、「相手の言うとおりにしたら、自分の考えがなくなる」と怖くなることも考えられます。



認めてほしい。でも、自分を小さく扱われたくない。どっちも、その人の願いなんだ。



ええ。ただ、二つを一緒に伝える言葉が見つからないと、押し返すことで自分を守ろうとするのかもしれません。ここでは、そうした心を守ろうとする反応を「防衛」と呼んで考えてみましょう。
同じ反発でも、守りたいものは人によって違います。自分の価値、自分で選ぶ自由、努力してきた時間。本人にも、その瞬間ははっきり分からないことがあります。



じゃあ、「どうして逆のことをするの?」だけでは、見えないものがあるね。



「あの返事をしなかったら、何が起きそうで怖かった?」と聞いてみると、自分が守りたかったものに近づけるかもしれません。
相手の言葉を、どんな意味で受け取った?


Aileはノートを二つに分けました。左に「相手が言ったこと」、右に「私が受け取った意味」と書きます。



さっきの例なら、左には「ここを少し変えたら、もっと伝わりそう」。右には、どんな言葉が入りそうでしょう。



「今の君の案では足りない」とか。「君より僕のほうが分かっている」とか。



そう聞こえたなら、腹が立つのも分かる気がします。ただ、右に書いた意味まで、相手が実際に言ったかどうかは、まだ分かりませんね。



言われたことと、頭の中で付け加わった意味が、一緒になっている。



なることはありそうです。前に見下された経験があると、今回も同じことが始まったように感じるかもしれない。でも、その感覚だけで、今の相手の意図まで確定はできません。



それを「考えすぎだよ」で片づけられても、つらいよね。実際に、きつい言い方をされた可能性もあるし。



ええ。だから、言葉だけでなく、声の調子や、その前後のやり取りも見たいです。「どの部分を変えると伝わると思った?」と、具体的に聞ける場面もありますね。



聞いてみたら、一行だけの話だったと分かるかもしれない。逆に、自分の考えを全然聞いてもらえていなかったと分かることもある。



その違いが分かれば、次に伝えることも変わります。自分の受け取り方を確かめることは、自分が悪かったと決めることではありません。
えむくんは、右側に書かれた言葉を見つめました。「そう感じた」は残しておく。そのうえで、「相手は何を伝えたかったのか」には、確かめる余地を残す。二つの欄は、どちらかを消すためのものではありませんでした。
反発した瞬間、少し楽になっていなかった?





あとで気まずくなるって分かっていても、同じ返し方を繰り返すことがあるよね。そこが、まだ不思議なんだ。



その直後には、何が起きていたのでしょう。たとえば強く言い返したら、相手がそれ以上言わなくなった。すると、その場では、ほっとしたかもしれません。



これ以上、指摘されずに済んだ。自分の考えも、ひとまず守れた。



はい。ところが、その後、相手が提案しなくなったら、「もう期待されていないのかな」と寂しくなることもありそうです。



欲しかったのは、関わってもらうことだったのに。



その場をしのげたことと、望んだ関係に近づけたことが、同じとは限らないんですね。これも、繰り返しを考えるときの一つの見方です。
言い返した瞬間には、追い込まれた感じが薄れた。でも、落ち着いたあとには、一緒に考える時間が減っていた。目の前の苦しさを避けるために取った行動が、後から別の寂しさを生む。そんな場面が自分にもなかったか、振り返ってみます。



「また失敗した」で終わるより、あの瞬間には何が楽になったのかを見たほうが、次を考えられそうだね。



そう思います。守れたものも、そのあとに起きたことも、両方見てみる。そのうえで、同じ守り方を続けたいか、自分で考えられますから。
意見が違うことと、自分を守る反応を分けて見る


休憩スペースの窓が、風で小さく鳴りました。えむくんは少し考え、カップをテーブルへ戻します。



でも、こういう話を知ると、相手から「君は防衛してるだけだよ」って言われそうで、それは嫌だな。僕にも、反対する理由があるかもしれない。



その言葉で意見を片づけられたら、話し合いにくくなりますね。怖さがあることと、意見に理由があることは、同時に起こります。



相手の言い方に傷ついても、提案の一部には賛成できる。反対に、優しく言ってくれても、内容には納得できないこともある。



ええ。だから、「内容のどこが違うと思う?」「伝え方の何がつらかった?」と、分けて考えてみたいです。



さっきの企画なら、「ここは残したい理由がある。でも、説明が分かりにくいところは教えてほしい」と言えるかもしれない。



それなら、自分の考えも、相手から聞きたいことも伝わりますね。全部受け入れるか、全部押し返すかの間に、話せることが見つかりそうです。



すぐには整理できなかったら、「少し考えてから返したい」でもいいのかな。



もちろん。返事を急がず、自分が何に反応したのかを見る時間を取れます。
この観察は、相手の本音を言い当てるために使うものではありません。自分が言い返したくなったとき、何に反対していて、何を守りたいのかを確かめる。そのための、小さな立ち止まりです。
本当は、どんなふうに接してほしかった?





では、さっきの場面へもう一度戻ってみましょう。提案を聞く前に、何があったら話しやすかったと思いますか。



僕なら、なぜそう考えたのかを、先に聞いてほしいかもしれない。変えるのが嫌というより、考えたことを飛ばして話を進められると、寂しい。



「自分の考えも聞いてほしい」。それなら、相手に伝えられる願いになりますね。



「提案ありがとう。そこを選んだ理由も聞いてもらってから、一緒に考えたい」。そんな感じかな。



はい。相手にも、何をしてほしいのかが分かります。もし先に強く返してしまったなら、「さっきは言い方が強くなった。先に理由を聞いてほしかった」と、伝え直すこともできますね。



そう伝えても、自分の案がそのまま通るとは限らないね。



ええ。相手にも考えがあります。でも、互いの理由を聞いたうえで決める会話には近づけるかもしれません。
えむくんはノートの空いたところに、「分かってほしい」を書きました。その下へ、「何を分かってほしかった?」と付け足します。認められたいという願いを、目の前の相手に伝えられる大きさにしてみます。



どう思われたいかが分かっているだけでは、そのための返事まで、すぐ選べるわけじゃないんだね。



そうですね。願いに気づくことと、その場で言葉にすること。その間を、少しずつ練習していけると思います。
今日の観察は、一つの場面だけで十分です。相手が実際に言った言葉、自分が受け取った意味、本当はしてほしかったこと。その三つを、別々に書いてみてください。まだ分からないところは、空欄のままでも大丈夫です。



私も、次に言い返したくなったら、ノートを思い出してみます。内容を聞く前に、自分の中で結論を出していないかな、って。



僕は、「まず理由を聞いてほしかった」を覚えておこうかな。「分かってよ」だけより、伝わりそうだから。
Aileはノートの最後に、一行を残しました。「言い返したくなった私にも、伝えたかった願いがあるかもしれない。」二人は冷めかけたコーヒーを飲み、午後の仕事へ戻ります。誰かの評価が気になる自分を責める前に、その言葉が、自分には何を意味していたのか。次回は、意見を言われただけなのに、自分を否定された気がするときの心を、一緒に見つめます。














