久しぶりの返事が、嬉しかった。
また笑い合えて、ほっとした。
それなのに、会話が続くうちに、少しだけ心配になる。
ここからまた、以前と同じ毎日が始まるのだろうか。
今度こそ気まずくしたくなくて、無理をしてしまうのではないだろうか。
Rinaの放課後リライト「自分から離れたあと、もう一度話したくなったら」、全4話の最終話です。
自分の寂しさを認め、一通を送り、返事を待つ時間を過ごしたLia。今日は、やり取りが再開したあとのお話です。この物語はフィクションです。
懐かしい返事が、届いた

数日後。ベーカリーに着いたLiaは、窓際にいるRinaを見つけて手を振った。
Rinaのトレーには、丸いスープカップと小さなパンが載っていた。
Lia(りあ)今日は、半分にするパンじゃないんだね



かぼちゃのスープにつられちゃった。Liaも頼む?



うん。あ、それとね。写真の返事、来たよ
送った日の夜、友人から返事が届いていた。
栗のデニッシュを見て、秋がひと休みしているみたいだと書いてあった。写真を嬉しく見たことも、最近は帰宅が遅くなっていることも。
Liaは、その独特な感想に声を出して笑った。思い出していたのは、こういうやり取りだった。



秋がひと休み、だって。やっぱり、お菓子に季節の何かを感じる人だった



食べる前から、もう物語になってるね



嬉しかった。私も、久しぶりにその感想が聞けて嬉しいって返したんだ
嬉しかったことを話すLiaに、Rinaも笑った。
一通を送る前には分からなかった相手の近況が、少しずつ分かってきた。
ただ、その夜の会話ですべてが元通りになったわけではなかった。
嬉しいのに、また頑張ろうとしていた





そのあと、最近見た映画の話になって。楽しかったんだけど、寝る時間が近くなっても終われなくて



もっと話していたかった?



それもある。でも、私から連絡したんだから、今度はちゃんと返さなきゃって思った
画面に文章を打ちながら、Liaはあくびをしていた。
前なら、そのまま眠気を隠して返信していたかもしれない。
やっとまた話せたのに、ここで終わりにしたら冷たいと思われる気がしたから。



連絡したときは、少し話したいって思ってたはずなのに。返事が来たら、何でも応じられる私になろうとしてた



嬉しいのと、眠いのは、一緒にあるもんね



うん。眠いって言ったら、嬉しくなかったことになる気がしてたけど
以前、Liaが疲れてしまったのは、友人から返信を急かされたからではなかった。
自分が疲れていると伝えられず、会話を終えることに罪悪感を持っていた。
また話せるようになった嬉しさだけで、その癖が消えるわけではない。だからこそ、今回、眠いと気づいたところで、前とは違う言葉を選ぶ余地があった。
「また話したい」と「今日は寝たい」を一緒に





少し迷ったけど、こう送ったの。「また話せて嬉しい。今日はそろそろ寝るね。映画の続き、明日読ませて」って



ちゃんと、嬉しいも残ってるね



うん。そしたら、おやすみって返ってきて。その日は、そこで終わった
会話を終えたあと、Liaは一度だけ画面を見直した。
怒った返事は来ていなかった。けれど、それだけで今後いつでも同じように進むと決まったわけでもない。
その夜にできたのは、今の自分の状態を伝え、会話を終えることだった。
小さな出来事だけれど、Liaには覚えておきたい経験になった。



休むことと、相手を大切にすること。どっちか選ばなくてもよかったんだね



私も、今日は帰るけど、またごはん行こうねって言うよ。帰りたい日でも、また会いたい人はいるし
Liaは頷いて、スープをひと口飲んだ。
熱すぎなくなったかぼちゃの甘さが、口に広がった。
一度に全部できなくても、相手への気持ちまで減ったことにしなくてよかった。
自分のペースだけで、二人の形を決めない





でも、私が返せるときだけ、って決めちゃっていいのかな。向こうは、もっと話したいかもしれないよね



それは、聞いてみてもいいんじゃない? 今は向こうも帰りが遅いんでしょ
連絡を減らす前の記憶だけで、相手の今の希望を決めることはできない。
Liaの生活が変わったように、友人の生活も変わっているかもしれなかった。
翌日のやり取りで、Liaは自分の希望を伝え、相手にも聞いていた。



「また写真を送り合ったり、時々近況を話したりできたら嬉しい。夜は早めに休みたいから、返事が翌日になることもあると思う。今、どんな感じだと話しやすい?」って



向こうは何て?
友人も、平日の夜に長くやり取りするのは難しくなっていると教えてくれた。
写真は見たいし、自分からも送りたい。ただ、たまには短くても、その場で話せる時間があると嬉しいという。
Liaが思い描いていた、空いたときに写真を返す付き合い方。それだけでは収まらない、友人自身の希望もあった。



私、ゆっくり返す形なら二人とも楽なんだって、先に思ってた。でも、時々はちゃんと時間を合わせたいんだなって分かった



Liaは、それはどうだった?



私も、少しなら話したい。毎晩は難しいけど、今度のお休みにお茶するのは楽しそうって思った
小さな予定は、二人で調整できる


最初にLiaが出した土曜の午後は、友人の予定が合わなかった。
友人が代わりに出した日曜なら、Liaも時間を取れそうだった。ただ、その日は夕方に買い物を済ませたかった。



前なら、何時でも大丈夫って言ってたかも。でも今回は、三時から四時くらいまでなら、って言ったんだ



それで決まった?



うん。一時間くらい、お茶することになった。あのパン屋さん、場所を知りたいって言ってたから、ここに
最初の候補が合わなくても、断られた気持ちだけで会話を閉じず、別の日を考えることができた。
Liaも、自分の予定を消して合わせる必要はなかった。
希望が違ったとき、片方が黙って引き受ける以外にも、相談できることがある。その小さな実例が、一つできた。



まだ会ってないのに、全部うまくいったみたいには言えないけどね



そうだね。まずは、何を食べるかだね



そこは大事。栗のデニッシュ、残ってるといいな
一度決めた関わり方を、ずっと守り続ける契約にしなくてもいい。
実際に会ってみたら、一時間でちょうどよいと感じるかもしれない。もう少し話したくなるかもしれない。
そのときは、その日の都合と気持ちを、また二人で確かめればよかった。
すべての関係が、同じように再開するわけではない


この物語では、友人にもLiaと話したい気持ちがあり、予定を相談できました。
けれど、連絡すれば必ずこうなるわけではありません。
相手が今はやり取りを望まないことも、希望する頻度が合わないこともあります。返事が来ないままのこともあります。
その場合は、自分の伝え方が足りなかったと決めて、何度も説明やお願いを重ねなくて構いません。
自分の望みを言葉にすることと、その望みが二人の関係になることには、相手の選択という違いがあります。
応じてもらえなかった寂しさも、こちらにあった親しさも、なかったことにする必要はありません。



今回、私が話したいだけじゃ、予定は決まらなかったんだよね。向こうも話したいって言ってくれて、一緒に日を考えてくれたから



うん。二人で決めた予定だね
Liaはその言葉を聞いて、日曜のお茶を少し楽しみにした。
頑張って取り戻さなければならない過去ではなく、二人が今、予定表に書き込めた一時間だった。
今の自分が言える言葉から


このシリーズで、Liaは少しずつ言葉を増やしました。
「私は、またあの人と少し話してみたい」
自分だけのメモに書いた気持ち。
「また話したくなって連絡しました」
相手に渡した一通。
「返事が来たら嬉しい。それと、今日のお昼も楽しかった」
待つ時間の中で見つけた、自分の一日。
そして今回は、「また話せて嬉しい。今日はそろそろ寝るね」。
相手への親しさと、自分の暮らしを、同じ会話の中に置くことができました。
前と同じ頻度に戻すことだけが、関係を大切にする方法ではありません。
今の自分は、何が嬉しいのか。何ならできそうか。相手はどうしたいのか。
その話ができることも、これからの関係をつくる大切な一歩です。



前みたいに話せるかな、ばっかり考えてたけど。今の私たちで、何を話そうかなって思えるようになってきた



まずは、栗の感想でしょ



うん。秋がひと休みするところ、見届けてくる
二人で笑うと、Rinaが空になったスープカップをトレーへ戻した。
Liaも最後のパンを食べて、時計を見る。午後の仕事に戻る時間だった。
寂しさをなくしてからでなくても、完璧に安心できてからでなくても。
自分の気持ちを知り、伝え、相手の言葉を聞いてみる。その途中で、休んだり、考え直したりしてもいい。
もし今、関わり方を相談したい人がいるなら、「また一緒にしたいこと」と「今の自分が無理なくできること」を、一つずつ言葉にしてみませんか。
その先は、相手の希望も聞きながら。
Liaのスマートフォンには、日曜の約束が一つ増えた。
毎晩の時間が全部埋まったわけではない。
それでも、また会って話したい人との予定を見て、Liaは嬉しかった。
「自分から離れたあと、もう一度話したくなったら」全4話、おわり。












