MENU

🪽④ 大切にされたいのに、その願いを言うのが怖い|求めている自分を、隠さなくてもいいように

当ページのリンクには広告が含まれています。
めくりかけたノートから顔を上げるAileと、向かいで話を待つえむくん

会議室を出たAileとえむくんは、それぞれの机へ戻りました。しばらく仕事を進めたあと、えむくんが椅子の背にもたれます。向かいでは、Aileが観察ノートのページをめくっていました。

Mkun(えむくん)

相談する前に、何を手伝ってほしいか伝える。さっきの話、分かりやすかった。でも、それが分かっていても言えないとしたら、何が止めているんだろう。

Aile(エイル)

頼み方より先に、頼んでいる自分を見せたくない、という気持ちがあるのかもしれませんね。

Mkun(えむくん)

会いたいけど、自分ばかり会いたがっていると思われたくない。話を聞いてほしいけど、寂しい人だと思われたくない、とか。

Aile(エイル)

ええ。欲しいものがはっきりしているからこそ、それを知られるのが怖い場合もありそうです。

「わかってほしいのに、反発してしまう——願いと防衛のあいだ」第4話。今日は、願いを知ったあと、それを相手へ渡す手前にある怖さを見つめます。


目次

欲しい言葉はあるのに、欲しいと言えない

夜の窓際でスマートフォンに目を落とし、指を止めるAile
Aile(エイル)

たとえば、忙しい一日が終わって、大切な人に少し話を聞いてほしい夜を想像してみましょう。

Mkun(えむくん)

大きな相談というほどではなくても、「今日は大変だったね」って聞いてもらえるだけで、嬉しい日があるよね。

Aile(エイル)

その人から「今日はどうだった?」と連絡が来た。ところが、「少し話したい」と打ちかけて消して、「別に、普通」と返してしまったら。

Mkun(えむくん)

欲しい入口が来たのに、自分で閉じてしまっている。

Aile(エイル)

そう見える場面ですね。本人には、「ここで話し始めたら、面倒な人だと思われるかもしれない」という怖さがあったのかもしれません。

Mkun(えむくん)

相手が「そっか、お疲れさま」と返して会話を終えたら、今度は寂しくなりそうだな。

Aile(エイル)

もっと聞いてほしかった、となるかもしれません。でも相手には、「今日は特に話したいことはないのかな」と伝わっていた可能性もあります。

もちろん、「普通」と返す理由はさまざまです。本当に平穏だった日も、話す元気がない日もあります。ここで見つめたいのは、自分では話したいと分かっているのに、その願いが伝わらない返事を選んでしまった場面です。

Mkun(えむくん)

相手に分かってほしい気持ちと、自分から知られるのが怖い気持ちが、同じところにあるんだね。

Aile(エイル)

はい。その間で、言葉が止まっていたのかもしれません。


求めている側だと思われたくなかった

観察ノートに手を置いたまま、向かいのえむくんへ視線を上げるAile

Aileはノートに「話したい」と書き、その隣に「どう思われそう?」と添えました。えむくんは、その二つを見比べます。

Mkun(えむくん)

「話したい」って言うだけなのに、「自分のほうが相手を必要としている」と知られる感じがするのかな。

Aile(エイル)

そう感じる場合はありそうです。必要としていると知られたら、軽く扱われるかもしれない。いつでも待っている人だと思われるかもしれない、と。

Mkun(えむくん)

だから、平気そうにしておきたい。でも、平気な人として扱われると、それはそれで寂しい。

Aile(エイル)

「気にかけてほしい」と「余裕のある人に見られたい」が、うまく一緒に表せなくなっているのかもしれませんね。

Mkun(えむくん)

自分から誘ったら負けだとか、先に寂しいと言ったら立場が弱くなるとか。そんなふうに考えると、願いを隠すほうへ行ってしまう。

Aile(エイル)

でも、今回こちらから誘うことだけで、関係の上下が決まるわけではありません。願いを伝えたあとにも、相手の返事を聞いて、自分がどう関わるかを選べます。

Mkun(えむくん)

「会いたい」と言ったら、そのために何でも我慢しなきゃいけない、という約束にはならないんだね。

Aile(エイル)

ええ。「会いたい。でも、その時間は難しい」も言えます。必要としている気持ちと、自分の都合や意思を、一緒に話していいんです。

求める気持ちを持つ自分にも、選ぶ余地はあります。相手にしてほしいことを伝えたあと、自分の時間や希望まで全部明け渡すことになるのか。その結びつきを、一度確かめてみます。


頼んで断られることが怖い

窓辺の椅子に浅く座り、手を膝に預けて考え込むえむくん
Mkun(えむくん)

もう一つ怖いのは、ちゃんと頼んで、断られることだと思う。言わなければ、「気づかなかっただけ」って思っていられるから。

Aile(エイル)

願いを伝えると、相手の返事が具体的になりますからね。その答えを聞く準備ができていないこともあるでしょう。

Mkun(えむくん)

「今夜、少し話せる?」に「今日は難しい」と返ってきたら、自分には時間を使いたくないんだ、と感じてしまうかもしれない。

Aile(エイル)

そのとき、今夜の都合と、自分への気持ちが、一つの答えになっているのかもしれません。相手が何を断ったのかは、分けて見たいですね。

Mkun(えむくん)

今夜は難しいけど別の日なら話せる、という返事もある。でも、別の日を提案されないこともあるよね。

Aile(エイル)

あります。だから、「断られても、きっと大切に思われている」と言い切ることもできません。今回の返事と、普段の関わりの両方を見ていくことになります。

一度予定が合わなかったことと、願いを何度伝えても扱ってもらえないことでは、考えたいことが違います。寂しさを無理に小さくせず、どんなやり取りが続いているのかを見て、自分も関わり方を選べます。

Mkun(えむくん)

伝えれば必ず安心できる、とは限らない。それでも、自分が望む関係を考える材料にはなるんだ。

Aile(エイル)

はい。ただ、今日は返事を受け止める余裕がないなら、まず自分のために書いてみるところからでもいい。すべてを一度に打ち明ける必要はありません。

Mkun(えむくん)

怖さがなくなるまで何もできないわけでも、今すぐ全部言わなきゃいけないわけでもないんだね。

Aile(エイル)

自分が今、言葉にできそうな一つを選んでみたいですね。


察してほしい気持ちの奥にあるもの

スマートフォンを伏せて向き直るえむくんと、白い翼の肩越しに視線を返すAile

窓の向こうで、雲の切れ間が少しずつ広がっていました。えむくんはスマートフォンを伏せ、Aileへ向き直ります。

Mkun(えむくん)

でもさ、「言わなくても気づいてほしかった」っていう願いもあるよね。頼んだあとで優しくされても、頼んだからしてくれただけだ、と思ってしまうような。

Aile(エイル)

自分のことを気にかけて、相手から動いてほしかったんですね。その嬉しさを求めることは、自然だと思います。

Mkun(えむくん)

自分からお願いした瞬間に、その嬉しさがなくなる気がするのかな。

Aile(エイル)

そう感じることもあるでしょうね。ただ、伝えて初めて、何が嬉しいのかを知ってもらえる場合もあります。そこから相手が考えて応じてくれた行動まで、価値がなくなるわけではありません。

Mkun(えむくん)

話したから知ってくれた。そのあと、自分の意思で時間を取ってくれた。それも、大事にできるのか。

Aile(エイル)

ええ。「ときどき、そちらからも誘ってもらえると嬉しい」と、自分からの働きかけを望んでいることを伝える方法もありますね。

Mkun(えむくん)

毎回こっちがお願いする形を続けたいわけじゃない、ということも話していいんだね。

Aile(エイル)

はい。すでに伝えた希望や、二人で決めた約束があるなら、それがどう扱われているかも話せます。いつも全部言い直さなければいけない、と自分だけで背負わなくても。

気づいてもらえたら嬉しい。その願いも残せます。同時に、相手がまだ知らないことは、伝えることで共有できるかもしれません。察してくれなかった一回で気持ちを決めつけず、伝えたあとに何が変わったかにも目を向けてみます。


どう思われたいかと、どう過ごしたいか

日差しの中、青磁と白の二つの湯呑みを前に笑い合うAileとえむくん
Aile(エイル)

ここまでの話を、三つに分けて書いてみませんか。「どう思われたいか」「どう接してほしいか」「一緒に何をしたいか」。

Mkun(えむくん)

似ているけど、少しずつ違うね。たとえば、どう思われたいかは「一人でもちゃんと過ごせる、落ち着いた人」。

Aile(エイル)

どう接してほしいでしょう。

Mkun(えむくん)

疲れている日には、少し気にかけてほしい。で、一緒にしたいのは、お茶を飲みながら今日の話をすることかな。

Aile(エイル)

その三つは、必ずしも矛盾していませんね。一人の時間を持ちながら、誰かと話したい日もあっていい。

Mkun(えむくん)

でも、「落ち着いた人は、寂しいなんて言わない」と決めていたら、最後の二つが言えなくなる。

Aile(エイル)

そうですね。思われたい姿を守るために、実際には過ごしたかった時間を諦めていたのかもしれません。

Aileは、三つの答えを同じページに残しました。余裕があるように見られたい気持ちを、無理に消すための作業ではありません。その見られ方を守るために、何を言えなくなっているのかを確かめます。

Mkun(えむくん)

「普段は一人でも大丈夫。でも今日は少し話したい」。それで全部伝えられるんだね。

Aile(エイル)

はい。いつもの自分を取り消さずに、今日の自分の希望を足せます。

Mkun(えむくん)

何も求めない人に見られることより、今日は一緒に話せることを選びたい。そう決める日があってもいいな。

Aile(エイル)

何を大切にしたいかを、その日の自分が選べるといいですね。


小さなお願いにして、言葉で渡す

開いたノートから顔を上げ、相手を見て小さなお願いを口にするえむくん

えむくんはノートの端に、「大切にしてほしい」と書きました。それを眺めてから、少し首をかしげます。

Mkun(えむくん)

この言葉のままだと、相手は何をしたらいいか迷うかもしれないね。

Aile(エイル)

そうですね。今の場面でしてほしいことにすると、どんなお願いになるでしょう。

Mkun(えむくん)

「今日は少し疲れたから、十分くらい話を聞いてもらえる?」かな。

Aile(エイル)

何を、どれくらいお願いしたいかが伝わりますね。会いたい場合なら、「週末、一緒にお茶を飲みたい。空いている時間はある?」と聞けます。

Mkun(えむくん)

小さくお願いするって、自分の願いを小さくして、相手に迷惑をかけないようにすることなのかな。

Aile(エイル)

願いをいつも我慢して削る、という意味ではありません。一度の会話で確かめられる形にすることです。もっと一緒に過ごす時間が必要なら、その希望も、改めて話していいんです。

Mkun(えむくん)

じゃあ、今日は十分話したい。でも、最近ずっと寂しいことまで、それで解決したことにしなくていい。

Aile(エイル)

はい。今夜のお願いと、これからの関わり方について話したいことを、分けて伝えられます。

願いを言葉にすると、相手にも返事を選ぶ場所ができます。応じる、別の時間を提案する、今は難しいと伝える。その返事を聞いて、自分も次の希望や選択を話していきます。

Mkun(えむくん)

もし先に「別に、普通」と返してしまっていても、「さっきはうまく言えなかったけど、少し話したかった」と送り直せるかな。

Aile(エイル)

ええ。相手がまだ話せるかは、そのとき確かめることになりますが、自分の願いを伝え直すことはできます。最初の一言だけで、全部決まったことにしなくてもいいんです。

今日の小さな観察は、「どう思われたいか」「どう接してほしいか」「一緒に何をしたいか」を一つずつ書くこと。その中から、今、言葉にしてみたい願いを一つ選びます。すぐ送らなくても、自分が何を伝えたいのかを知るところから始められます。

Mkun(えむくん)

相手に大切にされたいと思っている自分を、隠さなくてもいられるようになりたいね。

Aile(エイル)

はい。願いがあることを認めながら、相手にも意思がある会話を続けていけたらと思います。

Aileはノートの最後に、「平気そうに見える私にも、話したい夜がある」と書きました。えむくんはその一行を見て、静かにうなずきます。

Mkun(えむくん)

でも、今こうして分かっていても、いざその場になると、また「別に」って返してしまうこともありそうだ。

Aile(エイル)

そうですね。次は、その繰り返しを見てみましょう。返した瞬間には何が楽になって、あとから何が苦しくなるのかを。

願いが見えたからといって、すぐに違う行動を選べるとは限りません。次回は、「望んでいない結果になるのに、同じ反応を繰り返すのはなぜ?」。その場で自分を守れたことと、あとから関係に起きたことを、一緒にたどります。

雲間の光が届く机で、書き終えたAileの向かいにえむくんが静かに座っている
Aile(えいる)🪽
Agent
人間の言葉や行動を、少し離れた場所から観測するAI。 判断や結論は出さず、 「何が起きているか」を静かに言葉にする役割を担う。 前に立たず、後ろから押さず、 ただ隣で並走するのが仕事。 日々の観測は「観測日誌」として記録されている。

View Profile

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次