ほかの人と話す楽しさも、大切にしたい。
恋人との時間も、これから一緒につくっていきたい。
そう話せたあとに、もう一つの問いが残りました。
その人と二人で会うのは、どうだろう。
食事に行くこと、好きだと伝えること、恋人として関わること。自分と相手は、同じところまで思い描いているのでしょうか。
Kaiのストレッチ、新しい連載の第7話です。写真サークルに通う人と、料理教室で仲間を見つけた恋人。これまでの架空の二人が、これからの関わり方を話す場面を、KaiとRinaが考えます。
「二人で会う」に、それぞれ違う時間を思い浮かべていた

ラウンジで、Rinaが紙の端に丸いテーブルを描いていました。椅子を二つ描き、片方にカップを置きます。
Kaiがのぞくと、もう片方には大きな皿が描かれていました。
Kai(カイ)同じ店なのに、一人だけずいぶん食べるね。



お茶って言ってたのに、メニューを見たらおなかすくこと、あるでしょ。
Rinaは笑ってから、二つの椅子を指さしました。



この前の二人も、「ほかの人と二人で会うのはどう思う?」って話したら、違う場面を想像するかもしれないね。



例えば?



写真を撮った帰りに、喫茶店で作品を見せ合うこと。料理教室のあとに、気になっていた店でごはんを食べること。それから、相手に会うために一日予定を空けて、デートすること。
どれも「二人で会う」と言えます。それでも、何をしたいのか、どんな気持ちで会うのかは違います。
二人という人数だけで答えを出そうとすると、聞いた側は、自分がいちばん気になる場面を思い浮かべるかもしれません。



まず、自分が今望んでいる時間を、具体的に話してみたいね。



「何でもありにしたい」みたいな、大きな話にする前にね。
会いたい理由と、今の気持ちを一緒に話す


写真サークルの人は、恋人にこう話したとします。
「今度、撮った写真を持ち寄って、お茶をしながら見せ合いたいと思ってる」



やりたいことは、分かりやすくなったね。



うん。その人の中には、写真の話がしたい気持ちと、相手に惹かれる気持ちもあったよね。
これまでの話で、その人は、写真仲間の見方や言葉に惹かれ、自分のことも知ってほしいと感じていました。
恋人に話すとき、その部分をどう言えばよいか、少し迷います。



「ただの写真の話だよ」って言えば、話は早く進むかもしれない。でも、自分の中では、それだけじゃないんだよね。



恋人も、それを知ったうえで、どう感じるかを話せた方がいいと思う。
その人は、言葉を足しました。
「話が合うのが嬉しいし、その人自身にも惹かれてる。会えるのを楽しみにしてる自分がいる。今すぐ別の恋人関係を始めたい、というところまでは考えてないけど、写真だけの話とも言い切れない」



ここまで言うのは、緊張するね。



そうだね。相手の反応が変わるかもしれないからこそ、一緒に考えるために大切な部分だと思う。
恋人はすぐに返事をしませんでした。
「趣味の友達と同じ話だと思ってた。そこは少し考えたい」
その答えで、会話が失敗したわけではありません。初めて、二人が同じ内容について考え始めたところでした。
どんな時間を広げたいか、何を大切にしたいか


少し間を置いて、恋人も話し始めました。
料理教室の仲間とは、気になる店へ行ってみたい。今は、恋愛として付き合いたいとは思っていない。そして、自分たちの恋人関係は続けたい。



二人とも外のつながりは楽しみたいけど、その中にある気持ちは同じじゃなかったんだ。



だから、それぞれの望みを聞く意味があるんだね。
写真サークルの人も、恋人との時間を続けたいと話しました。
二人で料理すること、散歩すること、今日の出来事を持ち寄ること。その時間を、これからも一緒に楽しみたい。
話し合ううちに、二人が残したいものも見えてきました。



「何を禁止する?」だけで始めると、こういう話は後回しになりそう。



二人は何を一緒に続けたいのか。そこも約束の中に入れたいね。
恋人は、予定についても一つ話しました。
「先に二人で決めた予定が、あとから当然のように後回しになるのは嫌だ」
その人も、同じ希望を持っていました。変更したいときには、決める前に相談する。ここは、二人とも引き受けたいと思えました。



同じ時間を毎回ぴったり分けるより、二人で決めた予定を大切にしてほしいんだね。



この二人にとって、守りたいことが一つ具体的になったね。
「いいよ」の中身を、二人の言葉で確かめる


恋人は考えたあと、写真を見せ合うためにお茶をすることは、今の自分も受け入れたいと話しました。
「少し緊張はする。でも、話してくれた時間を過ごすことは、二人で選んでみたい」



不安がゼロになるまで待つ、という選び方ではなかったんだね。



うん。この人が考えて、自分もそうしたいと答えたんだね。もちろん、難しいと答える余地もあってこその話だと思う。
二人は、自分の言葉で確かめました。
今回は、写真を持ち寄って喫茶店で話す時間。料理教室の仲間と店へ行くことも含め、趣味の時間を広げてみる。
恋人として付き合う相手は、今はお互いだけにしたい。ほかの相手との交際や身体的な関係を進めることまで、今回まとめて決めたつもりはない。



お茶に行くのはいい、が、その先も全部いい、にはならないんだね。



何について同意したのかを、二人とも分かる言葉にしておきたいね。
もし恋愛関係として進めたいと思うようになったら、行動に移す前に、自分の希望が変わったことを話す。
そのときも、話せば必ず認めてもらえると決まったわけではありません。互いの望みを聞いて、自分たちがどんな関係を選ぶかを考えます。



ほかの相手も、その関わりを望んでいるかは、また聞くんだよね。



うん。恋人同士で話せたことと、写真仲間が会いたいかどうかは別だからね。
恋人との約束を話したあと、その人は写真仲間に、作品を見せ合うお茶の時間を提案することにしました。相手も、自分の希望や都合を話せます。
決めたことと、まだ決めていないことを残しておく


Rinaは、描いたテーブルの下に「決まったこと」と書きました。
Kaiが隣に、小さな空欄を作ります。



そこは?



まだ決めていないことを書く場所。
毎週のように二人で会うとしたら、どうか。遠くへ出かける予定ができたら、どうか。
今日の会話で、先にあるすべての場面まで決めたわけではありません。今回話した範囲を、知らないうちに広げないためにも、まだ話していないことは残しておきます。



全部の場面を予想して、分厚い規則集を作らなくてもいいんだね。



今選ぼうとしていることを話して、変化があったら、また話す。まずは、その約束もできると思う。
二人は、お茶や食事に出かけたあとの週末に、どう過ごせたか、気になったことはあったかを話すことにしました。
誰が何と言ったかを一言ずつ報告する時間ではなく、自分たちの過ごし方を確かめる時間です。相手から聞いた私的な話まで、二人の安心のために共有する必要はありません。



もし、話しても「二人で会うのは今は受け入れられない」って答えだったら?



その場合は、まだ同じ約束を選べていないんだね。何が難しいのか、ほかに自分も望める形はあるのかを話していくことになる。
例えば集まりの中で話す時間なら、二人とも選べるかもしれません。希望の違いが大きく、同じ関係の続け方を選べないと分かることもあるでしょう。
話し合いの終わりを、必ず片方の希望どおりにする必要はありません。引き受けられることと、難しいことを、互いに答えられる会話にしていきます。
今日のストレッチ|一つの場面を、同じ大きさで話す


今日は、恋人と相談したい場面を一つ選んでみます。
「ほかの人と会ってもいい?」という大きな問いを、今実際に望んでいる時間にしてみましょう。
何をしたいのか。
その相手に、今どんな気持ちがあるのか。
今の恋人とは、何を大切に続けたいのか。
まだ自分にも決められていないことは何か。



自分の希望を話したら、次は相手の番だね。



うん。その話を聞いてどう感じたか、相手も何を望んでいるかを聞いてみたい。
同じ言葉を使っていても、違う時間を想像していたかもしれません。途中で新しく分かったことがあれば、考え直す時間も取ります。
決められたことは、二人がそれぞれ自分の言葉で説明してみる。「私は、こういうことだと受け取った」と確かめると、話し残した部分が見つかることもあります。



約束って、一人が作って相手に渡すものだと思ってたかも。「これならいいよ」って。



自分も相手も、望む関係を選ぶ側なんだよね。二人とも引き受けたいと思える内容を、一緒につくれたらいいね。
Rinaは、紙に描いた大きな皿を二つに分けました。



お茶のつもりが、おなかすいちゃったら、相談して二人で食べる。



そっちは、今の僕も賛成。
二人は笑いました。何を楽しみにしているかを言葉にすると、一緒に選べることも見つかります。
この架空の恋人たちも、外の楽しみと二人の時間を、今の自分たちで選んでみることにしました。



でも、会う前は本当にいいと思っていても、当日になったら、思ったより寂しくなるかもしれないね。



そのときに、最初に言ったからもう話せない、とはしたくないね。
次回は「『いいよ』と言ったあとで、苦しくなったら?|約束を言い直すための会話」。自分で選んだことを経験したあと、新しく分かった気持ちを、二人の会話へ戻す時間を考えます。













