夕方のMkunWorld。机の上の資料が片づき始める頃、えむくんは、Aileと話してきたことをノートで振り返っていました。「話したい」「まず聞いてほしい」「自分で選びたい」。そこには、強い返事の手前にあった願いが並んでいます。
Mkun(えむくん)こうして書いてあると、よく分かるね。でも、その場になったら、また同じ返し方をしてしまうこともあると思うんだ。



前回は、頼みたいことが分かっていても、それを見せるのが怖い場面を考えましたね。



うん。「別に」と返したら話が終わって、あとで寂しくなる。それを経験しても、次にまた「別に」と返してしまう。どうして、困ると分かっていることを繰り返すんだろう。



今回は、返した直後と、少し時間がたったあとを分けて見てみませんか。その場では、何か楽になったこともあったのかもしれません。
「わかってほしいのに、反発してしまう——願いと防衛のあいだ」第5話。願いと行動がずれる一場面を、最初からたどってみます。
また強く言ってしまった、そのあとで





たとえば、仲間と企画を考えていて、提案をもらったとき。「それはもう考えたから」と、強く返してしまった場面ならどうかな。



本当は、どんな時間にしたかったのでしょう。



自分の案も聞いてもらって、一緒に面白いものにしたかった。でも、相手が黙ってしまって、話が進まなくなる。



あとで思い返すと、もっと違う言い方があったと感じるかもしれませんね。



そこで、「またやった。自分はいつもこうだ」となると、もう振り返るのも嫌になる。



つらいですね。ただ、繰り返しを調べるなら、「いつも」の中から、まず一回だけ選んでみたいです。どんな言葉を、どんな場面で返したのか。
Aileはノートの新しいページに、短い場面を書きました。相手が案を出した。こちらは「それはもう考えたから」と返した。相手が黙った。ここではまだ、どちらがどんな人かという結論を付けず、やり取りの順番を残します。



一回に絞ると、「誰にでもそうする」のか、「この話題のときだけ強くなる」のかも見えてきそうだね。



ええ。仕事が重なっていたのか、時間に追われていたのか。反応が出やすかった条件にも、目を向けられます。
その瞬間、何から逃れられた?





その提案を聞いたとき、自分には、どんな意味に聞こえていたのでしょう。



「そこまで考えていなかったでしょ」と言われた感じかな。実際には、ただ別の案を出してくれただけかもしれないけど。



そう受け取ったなら、考えていたことを急いで証明したくなるかもしれませんね。



それで、「もう考えた」と強く返す。相手が黙った瞬間には、もう指摘されずに済んだと思って、少しほっとしたのかもしれない。



その可能性はありますね。自分の準備不足を見られたような感じや、説明を求められる苦しさが、一度止まったのかもしれません。



あとでは後悔するのに、その場では助かった感じもあった。そこを見落としていたのかな。



そういう見方ができる場面はありそうです。その反応が、その場で何を変えたのかを確かめるんですね。
前回の「話したいのに、別にと返す」場面でも、願いを見せずに済んだ安心があったかもしれません。断られる返事を、今は聞かずに済んだ。寂しいと知られずに済んだ。その直後に起きた変化を、自分の感覚でたどってみます。



でも、本人がいつも、楽になるために計算してやっているとは限らないよね。



はい。言葉が出たあとで、ようやく気づくこともあると思います。逆に、直後にも楽になっていなかったなら、無理にこの説明へ当てはめなくていいんです。
心を守るための反応という見方は、原因を一つに決めるためのものではありません。疲れ、習慣、実際に相手から受けた扱いなど、ほかの条件も含めて見ていきます。
目先の安心と、あとから増える距離





その場でほっとしたなら、また同じことをしたくなるのも、少し分かる気がする。次に同じ怖さが来たとき、知っている返し方が出るのかな。



そう考えられる場合がありますね。あとから困った経験があっても、その瞬間には、目の前の苦しさを早く止めたい気持ちが強くなるのかもしれません。
Aileは、ページの下に二つの欄を作りました。「返した直後」と「そのあと」。えむくんは、さっきの企画の場面を当てはめます。



直後は、相手が黙って、自分の案を否定されずに済んだ感じがした。そのあとには、相手から案が出なくなって、一人で考える時間が増えた。



本来は、一緒に考えたかったんですよね。



うん。しかも、「最近、あの人は何も言ってくれない」と思ったら、また寂しくなる。自分の返事が関係している可能性を、忘れてしまいそうだ。



相手からすると、話を広げるより、今は黙っていたほうがよいと思ったのかもしれませんね。ただ、その理由も本人に聞かなければ分かりません。



自分の願いを隠すことで、その場はしのげた。でも、相手には別の希望として届いていたのかもしれないんだ。



はい。「今は提案を聞きたくない」と届いたのかもしれない。自分が何を望んでいたかと、自分の言葉から何が伝わりそうかを、並べて見る必要がありそうです。
相手の反応には、相手の事情もあります。関係のすべてを自分の一言だけで説明することはできません。それでも、自分が出した言葉が、望んでいた関わりを分かりにくくしていなかったかは、確かめられます。
「相手が悪い」だけで話を閉じたくなるとき





そこを見るのも、ちょっと苦しいね。寂しくなった理由に、自分の返し方も関係していたかもしれないって。



認めたくない気持ちが出ることもあるでしょうね。「あんな言い方をする相手が悪い」で話を閉じたくなるかもしれません。



実際に、相手の言い方が嫌だった場合もある。でも、それで自分の返した言葉を何も見なくてよくなるわけではない。



ええ。「相手のこの言い方は困った」「私はこう返した」「そのあと、こうなった」と分けられます。相手への不満を取り消さなくても、自分が変えたいところは見つけられます。



自分の反応を振り返ることが、二人の問題を全部引き受けることになったら、続けられないね。



そうですね。自分だけを責めるための振り返りにはしたくありません。相手に伝えたいことと、自分が言い直したいことを、両方残しておきたいです。
えむくんは、ノートの端に「最初から駄目だと決めずに、理由を聞いてほしかった」と書きました。その下には、「こちらも、強い言葉で話を終わらせた」と続けます。一方を書いたからといって、もう一方を消す必要はありません。



「さっきは言い方が強くなった。僕の考えも聞いてもらってから、案を比べたい」。これなら、自分の返事を認めながら、してほしいことも伝えられるかな。



はい。そこから相手がどう応じるかを見て、また話し合えますね。振り返りを、自分が悪かったという結論だけで終わらせず、次の会話へ持っていけます。
同じ反応が出る前の場面を探す


Aileは時計を見てから、ノートへ視線を戻しました。終業まで、あと少し。二人は、その場で使える手がかりをもう一つ考えます。



強く言い返す少し前に、気づけそうなことはあるでしょうか。



相手が話している途中から、頭の中で反論を作っている、とか。最後まで聞かずに、もう返事が決まっている感じ。



それは一つの手がかりになりそうですね。人によっては、声が速くなる、同じ言葉を繰り返す、画面に強い文を打ち始める、といったことに気づくかもしれません。



いつもその場で気づけるとは思えないけど、あとから「あのときには、もう反論を考えていた」と分かるだけでもいいのかな。



もちろんです。気づける場所が、最初は会話の翌日でも、次には会話のあと、その次には言葉を送る前になるかもしれません。いつも同じように進むとは限りませんが、手がかりを知る意味はあります。



その日の疲れも書いておこうかな。余裕のある日には聞ける話が、締切前だと、責められたように聞こえることもありそうだから。



いいですね。話す時刻を変える、質問を一つずつにする、返事を文章で整理する。自分の心構え以外にも、変えられる条件が見つかるかもしれません。
振り返るときは、一つの場面について、きっかけ、受け取った意味、自分の反応、直後の変化、あとからの結果を書きます。分からないところは空欄でも構いません。原因をきれいに説明することより、次に使える手がかりを一つ見つけることを目指します。
次の一回だけ、違う返事を用意する





手がかりが分かったら、次は何を用意しておけばいいだろう。「もう絶対に言い返さない」だと、またできなかったときにつらくなりそう。



次に起きそうな一場面を決めて、代わりに使う短い言葉を一つ用意してみませんか。



提案を聞いて、すぐに「もう考えた」と言いたくなったら、「どんな意図の案か、もう少し聞かせて」。まず一つ、聞いてみる。



ええ。今は聞く余裕がないと気づいたなら、「急いで返しそうだから、少し整理してから話したい」でもいい。自分に必要な時間を、相手にも分かる言葉にできます。



話したいのに「別に」と返しそうな夜なら、「今日は少し話したい。でも、まだうまくまとまらない」。最初から全部説明しなくていいんだね。



はい。その言葉で必ず望む返事が来るとは限りません。でも、何をしてほしいのかは、前より伝わりやすくなるかもしれません。
変化を確かめるときには、相手が優しくなったかだけを見ないようにします。最後まで一文聞けたか。送信前に、自分の願いを一つ足せたか。強く返したあと、言い直せたか。自分が選べた小さな違いも、振り返りに残しておきます。



また強く言ってしまったら、その一回で全部やり直しになるわけじゃないんだね。



ええ。どこで気づけたかを見て、次の言葉を考え直せます。ただ、相手に嫌な思いをさせたなら、そのことも伝えて修復したいですね。自分に事情があったことと、相手への影響は、両方ありますから。



「怖かったから仕方ない」で終わらせずに、「だから次は、こう伝えてみたい」まで考える。



はい。自分を守りたい気持ちを知ったうえで、願いに近い返事を増やしていきたいですね。
今日の小さな一歩は、次に起こりそうな場面と、そのとき使う一言をセットで書いておくことです。次の提案を聞くとき。今日の様子を尋ねられたとき。一つの場面に、一つの言葉で十分です。



僕は、まず「もう少し聞かせて」を置いておこうかな。聞いたあとで、やっぱり意見が違うと思ったら、その理由を話したい。



それも大事ですね。反応を変えることが、いつも賛成することにならないように。
Aileはノートに、「その場で守れたものと、そのあとに望んだものを、両方見る」と書きました。次回は、「私は意見が違うのか、それとも傷つきたくないのか」。反対意見を大切にしながら、自分が何に反応しているのかを、もう少し細かく見つめていきます。













