名前を呼んでもらって、嬉しかった。
歌を褒めてもらって、また歌いたくなった。
「来てくれてありがとう。大好き💕」
その一言で、一日の疲れが少しほどけた。
けれど、あとになって考える。
あの「大好き」は、どんな意味だったのだろう。
恋愛の意味ではなかったら、あの時感じた温かさまで、勘違いになってしまうのだろうか。
夕方のMkunWorld編集室。Rinaはノートを開き、Liaはテーブルにお茶を置いた。
前回の「Rinaの放課後リライト」では、相手を一度の失敗で決めつけず、新しい朝を迎える心を考えました。
第2話は、音声配信やライブ、配信仲間とのやり取りで交わす「好き」の話。
えむくんが、発信する側と受け取る側、両方の気持ちをRinaに相談します。
発信者として、思うことがある
Mkun(えむくん)発信者として、思うことがあるんだ。
来てくれて嬉しい。一緒に笑えて楽しい。あなたの声や歌が好き。いつも応援してくれてありがとう。
そういう気持ちって、もっと温かく伝え合ってもいいと思うんだよね。



うん。歌や言葉を届けた先に、受け取ってくれた人がいる。その人に『いてくれて嬉しい』って伝えたいんだね。



そう。僕も誰かの配信を聴くし、仲間の作品に元気をもらう。
その時の『大好き』には、恋人になりたいとは違う気持ちも入っていると思う。



発信する人も、誰かの発信を受け取る人でもあるんですね。
『届いて嬉しい』『聴けて嬉しい』が行き来する時間。その親しさを大切にしたい、というお話ですね。



それなら、今日はそこを見ていこう。
恋愛ではなくても、本物の『好き』はあっていい。その気持ちを、どう伝えて、どう受け取れるか。
恋愛じゃなければ、社交辞令なの?



『配信の大好きは社交辞令だと思えばいい』って言うと、なんだか味気なくなるんだよね。
本当に嬉しかったり、本当にその人の歌が好きだったりするのに。



『恋愛じゃないなら、気持ちは入っていない』と考えると、こぼれてしまうものがあるよね。
感謝している。親しみを感じている。作品を楽しみにしている。一緒にいる時間が好き。
それぞれに、ちゃんと温度があると思う。



たとえば、配信仲間の歌を聴いて『この声、大好き』と伝える時。
恋人になりたい気持ちがなくても、その声が好きだという気持ちは、そのまま本物でいいですね。



うん。僕が言いたかったのは、それだと思う。
恋愛に進む予定がなくても、その人を喜ばせたいし、温かい気持ちを渡したいんだ。



ただ、一つの『大好き』に、どの気持ちが入っているかは本人にしか分からない。
全部を恋愛とも、全部を社交辞令とも決めずに、その人が何を好きだと伝えているのか、聞いてみたいね。
ハートを減らしたら、まだ怒っていることになる?



でも、恋愛に進めない相手には、勘違いさせないようにハートを減らしたり、少しそっけなくしたりすることもあるよね。
それが『まだ怒ってる?』『嫌われた?』って受け取られたら、すれ違うなって。



たとえば、前より甘い言葉を控えていても、本人の中には親しみが残っている、という場面だね。
相手には『気持ちが冷えた』と見えて、自分は『期待させすぎない距離を考えている』つもり。そこが違うのかもしれない。



第1話からつながるところですね。
もう怒っていなくても、接し方を前と同じにするとは限らない。心の落ち着きと、選ぶ距離は、それぞれ確かめたいです。



じゃあ、ハートが減っただけで、拒絶されたと決めなくてもいいんだね。



うん。絵文字だけでは理由は分からないよ。
親しみを残しながら距離を調整しているのかもしれないし、実際に交流を減らしたいのかもしれない。
『本当はもっと好きなはず』と、こちらの願いで埋めることもせずに、本人が伝えている距離を見ていきたい。
ハートの数だけでは、心の中までは読めません。
次に話せた時の言葉や、相手が希望する関わり方。そこから、今の二人に合う距離を確かめていくことができます。
勘違いさせないために、冷たくするしかない?



恋愛に進めないからって、嬉しい気持ちまで抑えるのは寂しいな。
温かく伝えながら、相手にも分かりやすくする方法ってある?



何が嬉しいのか、何が好きなのかを、少し具体的にしてみるといいと思う。
『その歌声、大好き。今日も聴けて嬉しかった』
『コメントで一緒に楽しんでくれてありがとう』
『配信仲間として、これからも応援しているよ』
気持ちを詳しくすることで、温かさの向いている先も伝えられるよ。



気持ちの違いを言葉にする必要がある場面なら、こんな伝え方もありますね。
『話せるのは嬉しいよ。私は配信仲間として、これからも楽しく交流できたらと思っている』



『嬉しい』を消さずに、望んでいる関係も伝えるんだね。



そう。ただ、恋愛の申し出があった時には、もう少しはっきり伝えた方がいいこともある。
『気持ちを伝えてくれてありがとう。私は恋人として付き合いたい気持ちはないんだ』って。
残念な答えを、相手が残念だと感じる余地もいるよ。すぐに笑って受け入れてもらうところまで求めなくていい。
日々の挨拶に、毎回説明を添える必要はありません。
期待の違いが見えてきた時に、その違いを話せること。温かさを続けるために、大切にしたい誠実さです。
「大好き」と言われて、もっと好きになった僕は?



受け取る側の僕だって、『大好き』と言われたら嬉しいよ。もっと好きになることもあると思う。
その気持ちは、どうしたらいいんだろう。



まず、『嬉しかった』『好きになった』でいいよ。その気持ちを、すぐに間違いにしなくていい。
そこから、相手の気持ちも知っていく。自分の中で恋が始まっていても、二人が同じ関係を望んでいるかは、まだ別に確かめたいところだね。



たとえば、『好きと言ってもらえて嬉しかった』は、自分の中で確かめられること。
『だから恋人になれる』というところは、相手の意思も必要ですね。



僕の嬉しさは大事にしていい。相手がどう付き合っていきたいかも、大事にするんだね。



うん。相手が配信仲間としての交流を望んでいるなら、その言葉を受け取る。
その距離で自分も楽しくいられるかは、えむくんが選んでいいよ。好きだからこそ苦しい時には、聴く頻度を減らすこともできる。



それと、個人的に『付き合おう』と話していたような場合は、その約束について話す必要があるよ。
配信者だからという理由で、二人の間にあった言葉まで、全部同じ意味にまとめなくていい。
恋人になれなかったら、温かかった時間も嘘になる?



僕がいちばん伝えたいのは、ここかもしれない。
恋人になれなくても、声を聴いて元気になれた。名前を呼ばれて嬉しかった。一緒に笑った時間に救われた。
その時間には、その時間の価値があると思うんだ。



うん。恋愛が叶わなかったあとに、嬉しかった記憶まで疑いたくなることはあるかもしれない。
でも、『恋人になりたかった』という願いが叶わなかったことと、『あの夜、笑えて嬉しかった』という自分の体験は、一緒に残っていていいと思う。



今は寂しくても、あの時少し元気になれたことまで、取り消さなくていいんですね。



そう。受け取った温かさを、恋愛の結果だけで採点したくない。



それは、えむくん自身が大切にできる見方だね。
ただ、つらい人に『楽しかったんだから感謝しよう』と急がせなくていい。今は、その声を聴くのもしんどいかもしれないから。
受け取ったものを大切にしながら、少し離れることもできます。
同じ場所に居続けることだけが、温かい時間の残し方ではありません。



今すぐ、きれいな思い出にしなくていいよ。
いつか振り返れた時、『あの時の私は、本当に嬉しかったんだな』と思えたら。その嬉しさまで、自分で否定しなくていい。
恋愛ではなくても、本物の「好き」はあっていい



僕は、温かさを大切に届けたいし、大切に受け取れる人でいたい。
配信者にも、リスナーにも、配信仲間にも、そう思うんだ。



そのために、自分の『好き』がどんな気持ちなのかを、言葉にしてみたいね。
声が好き。言葉が好き。一緒に笑う時間が好き。
恋愛という一つの答えにまとめなくても、伝えられる気持ちはたくさんあると思う。



今日、一言届けるなら、『あなたの何が好きだったか』や『何をしてもらって嬉しかったか』を添えてみませんか。
『今日の歌、帰り道に聴けて嬉しかった』。それだけでも、その人に渡せる気持ちがありますね。



届いたら嬉しい。僕も、そうやって言ってもらえたら嬉しい。
恋人になるかどうかだけでは測れない、大切な関係があるよね。
Rinaはノートに書いていた一文を、ゆっくり読み返した。



『恋愛じゃなかったら、あの大好きは何だったの?』
今日のリライトは、こう。
『あの大好きには、どんな温かさがあったんだろう。私には、何が届いたんだろう』
相手の心を、言葉一つで決めつけなくていい。
自分に届いた嬉しさも、なかったことにしなくていい。
そのうえで、お互いが望む関係を大切にしていく。



恋愛ではなくても、本物の『好き』はあっていい。
その温かさを、これからも丁寧に交わせたらいいね。
第1話をまだ読んでいない方へ
第1話は「すぐに許す人は損をする? 翌朝には心をリセットする、優しさの育て方」。
一度のすれ違いで相手の全部を決めつけず、自分の気持ちや生活も大切にしながら、新しい朝を迎える心を考えました。
「優しく接したい。でも、自分も傷つきたくない」と感じた方は、第1話もあわせて読んでみてください。
次の放課後は、好きが苦しくなった時の話
温かく受け取りたい。それでも、ほかの人への「大好き」を見て胸が痛む。
次の「Rinaの放課後リライト」では、応援する気持ちに嫉妬や寂しさが混ざった時、相手を縛らず、自分も置き去りにしない距離を考えます。









