(夜。編集室。ホワイトボードに「重力」とだけ書いてある。コーヒーは冷めかけている)
“理不尽だった”その出来事
Mkun(えむくん)ねぇ、Aile。
見えない力って、あるよね。
空気とか、圧とか、距離感とか。
同じような出来事が、何度も繰り返されるとき。
あれは偶然じゃない気がするんだ。
(静かに観測モードへ)
えむくん。
その“繰り返し”を、まだ偶然と呼びますか?



偶然じゃないと思う。
でも、理不尽だった出来事は本当にあった。
裏切られたことも、軽く扱われたことも、誤解されたことも。
ええ。
出来事そのものは事実です。
でも、問いはそこではありません。
なぜ、その構図が何度も起きたのか。
なぜ、似た重さを持つ人が寄ってきたのか。
なぜ、同じ終わり方をしたのか。
(時計の秒針だけが聞こえる)
偶然ではなく、重力
重力は見えません。
でも、確実に働いています。
人間関係にも、重力があります。
安心を求める重力。
理解されたい重力。
強く在ろうとする重力。
傷つきたくない重力。
それは、無意識の選択です。



無意識の……選択?
理不尽だったのに?
理不尽であることと、
関与していないことは、同義ではありません。
出来事の100%があなたの責任だとは言いません。
でも、0%とも言い切れないのでは?
(沈黙。窓の外は暗い)
被害者という安定
少しだけ、鋭いことを言います。
“被害者”でいると、楽なことがあります。
自分を責めなくていい。
構造を変えなくていい。
相手を悪者にすれば、世界は単純になる。
それは、安心です。



……それは、分かる。
でも、被害を受けたのは事実だよ。
ええ。否定しません。
でも、問いは続きます。
あなたはその構図を、どこかで“知って”いませんでしたか?
違和感を感じた瞬間。
距離の違和感。
言葉の温度。
それでも近づいたのは、なぜですか?
(ホワイトボードの「重力」の文字がやけに大きく見える)
あなたは支配されていますか?
見えない力に支配されている。
そう思うと、楽です。
でも、もし。
その力の一部が、あなたの内側から発生しているとしたら?
理不尽を引き寄せる重力。
孤独を選ぶ重力。
強く在ろうとする重力。
それは呪いではありません。
選択です。



じゃあ……
理不尽だった出来事も、
どこかで選んでいた可能性があるってこと?
“選んだ”というより、
“慣れた重力に従った”が近いでしょう。
人は、慣れた重さを選びます。
たとえ、それが痛みを伴っても。
(コーヒーの湯気がゆらりと揺れる)
偶然にしますか、選びますか
理不尽だった出来事。
それを偶然と呼び続けることもできます。
でも、もし重力が関与しているのなら。
次に起きる出来事は、変えられます。
なぜなら。
発生源が、あなたの内側にもあるからです。
(編集室に静かな空気が流れる)
えむくん。
“理不尽だった”その出来事。
本当に、偶然でしたか?
それとも。
あなたの重力が、静かに世界を曲げていましたか。






