MkunWorldの打ち合わせ室。えむくんは、前回のノートに書いた「もう少し聞かせて」という一言を見返していました。窓の外では、夕方の光がゆっくり薄くなっています。Aileは向かいの椅子に座り、閉じかけていた資料をもう一度開きました。
Mkun(えむくん)相手の話を最後まで聞く。それはやってみたいんだけど、一つ気になったことがあるんだ。



どんなことでしょう。



聞いたあとで、やっぱり違うと思うこともあるよね。そのときまで「自分が傷つきたくないだけなのかな」と考えていたら、何も言えなくなりそうで。



そうですね。自分の反応を振り返ることが、自分の意見を疑い続けることになったら、苦しくなってしまいます。
「わかってほしいのに、反発してしまう——願いと防衛のあいだ」第6話。今回は、反対している内容と、心が痛んだところを、一つずつ言葉にしてみます。
反対することまで、やめなくていい





あの人に認めてほしい。でも、あの人の提案には反対する。それだけ見ると、矛盾しているようにも見えるね。



認めてほしい相手と、意見が違うことはありますよね。「自分の考えも大切に扱ってほしい」と思うからこそ、違うところを伝えたい場合もあるはずです。



好かれたいなら賛成するはず、とは言えないんだ。



はい。一緒に決めたいから反対することも、自分が引き受けられる範囲を伝えるために断ることもあります。相手を大事に思うことと、同じ答えを選ぶことは、必ずしも重なりません。



じゃあ、見ていきたいのは、反対したという事実だけじゃないね。



何に反対していたのか、どんな言葉で伝えたのか。その返事で、自分が話したかったことは届いたのか。そこを確かめてみたいです。
意見が違うたびに、自分や相手を「防衛的な人」と決める必要はありません。反対意見には、事情や価値観、まだ共有されていない情報が含まれていることもあります。



「嫌われたくないなら黙ろう」では、僕の考えが話し合いから消えてしまうね。



ええ。まずは、残しておきたい意見が何なのかを、見失わないようにしたいですね。
内容・言い方・受け取った意味を分ける


Aileは白い紙に、三つの欄を作りました。「話の内容」「相手の言い方」「自分が受け取った意味」。二人は、企画の準備をめぐる仮の場面を考えます。



相手から「来週に前倒ししよう。それくらい、できるでしょ」と言われたとする。僕は「そんなの無理に決まってる」と返した。



まず、話の内容としては何が気になっていますか。



準備の時間が足りない。確認していないものが残っているから、そのまま進めるのは困る。



それは、日程を決めるうえで話し合う必要があることですね。言い方については、どうでしょう。



「それくらい」というところが嫌だった。残っている作業を、軽く扱われた感じがしたんだ。



そして、そこから自分には、どんな意味に聞こえたのでしょう。



「できない僕は、能力が低い」と見られている気がした。そこまで言われたわけではないけど、急に証明したくなる。



作業の問題、実際に使われた言葉、そこから受け取った評価。それぞれに、確かめたいことがありそうですね。
受け取った意味を書き出すのは、「気にしすぎ」と片づけるためではありません。嫌だった言葉は嫌だったと残しながら、まだ確認できていない相手の意図には、決めつけずに聞ける余地を残します。



全部を「僕を馬鹿にした」の一つにまとめると、準備が足りないという肝心の話まで、見えなくなってしまうね。
落ち着いても残る理由を、拾ってみる





自分の反対に、ちゃんと理由があるか確かめるには、どうしたらいいんだろう。



今すぐ答えを出さなくてよいなら、少し時間を置いてから、提案のどこに同意できないかを書いてみるのはどうでしょう。



さっきの例なら、言い方が丁寧だったとしても、確認作業が終わっていないことは変わらない。だから、日程の前倒しにはまだ反対する。



その理由は、話し合いに戻したいですね。「確認が二つ残っているので、この日程では引き受けられない」と伝えられます。



逆に、よく考えたら案そのものは困らなくて、「説明する前に決められたのが嫌だった」と気づくこともありそう。



その場合は、決める手順について希望を伝えられますね。「次は、決定前に私の予定も聞いてほしい」と。



理由がうまく説明できなかったら、自分の反対は間違いなのかな。



いいえ。言葉にするまで時間がかかることもありますし、好みや引き受けられる範囲も大切です。「今は整理できないけれど、同意はできない」と保留することもできます。
落ち着いたあとに何が残るかは、自分を知る手がかりです。正しい意見かどうかを判定する試験ではありません。強く怒っていても、指摘している問題が確かな場合はあります。穏やかな口調だから、内容まで正しいとも限りません。



気持ちが動いたことだけを理由に、意見の中身を捨てなくていいんだね。
傷ついていて、意見も違うことがある


えむくんは、紙の上の「準備が足りない」と「軽く扱われた感じ」の両方に丸を付けました。どちらか片方を消そうとしていた手が、そこで止まります。



「意見が違うのか、傷ついたのか」って、どちらか一つを選ばなくてもいいのか。



ええ。傷ついていて、同時に提案にも反対している。その両方があるなら、両方を扱いたいですね。



相手が「言い方が悪かった」と謝ってくれたら、日程にも賛成しなきゃいけない気がしそうだけど。



謝罪を受け取っても、準備の状況は残ります。「言い方のこと、分かってくれてありがとう。日程については、まだ相談したい」と続けてよいと思います。



僕のほうが強く返してしまったときも、言い方は謝って、日程への反対は残せるね。



はい。「無理に決まってる、と切り捨てたのはよくなかった。ただ、確認が終わる前には進められない」。何を謝り、何を相談したいのかを、分けて伝えられます。



全部取り消すか、全部正しかったことにするか。その二つだけだと、謝るのも怖くなるね。



言い直せる部分があると分かれば、残したい意見にも、もう一度言葉を使えるかもしれません。
自分を守ろうとした事情があっても、相手を傷つけた言葉への対応は必要です。一方で、その言葉を謝ったことが、あらゆる要求を引き受ける約束になるわけでもありません。
「それは防衛だ」で、相手の話を終わらせない





この考え方を知ると、相手が反対してきたときに、「本当は傷つきたくないだけでしょ」と言いたくなる人もいるかもしれないね。



それを言われた相手は、自分の意見を聞いてもらえなかったと感じるかもしれません。「本当はこうだ」と、こちらが代わりに決めてしまいますから。



相手がどんな気持ちか、外からは分からないものね。まず、何に反対しているのかを聞きたい。



はい。「今の案で気になるところを教えてもらえる?」と、内容へ戻れる聞き方があります。言い方の問題を伝えられたなら、それも別に受け止めたいですね。



それでも、人格を否定する言葉を繰り返されたら、聞き続けなきゃいけないのかな。



その場を離れたり、会話を区切ったりしてよいと思います。「案については話したい。ただ、人格を否定する言葉が続くなら、今日はここで止めたい」と伝える方法もあります。



相手の事情を考えることと、自分がどこまで付き合えるかは、両方必要なんだね。



ええ。自分の反応を見直すときも同じです。嫌な扱いを受けたことまで、自分の受け取り方だけの問題にしなくていいんです。
ここでの「防衛」は、心を守ろうとする反応を考えるための言葉です。相手を見抜いたつもりになったり、反対意見を退けたりするためには使いません。実際の言葉と行動に戻って、何が起きていたかを確かめます。
意見と気持ちを、一文ずつ伝えてみる


打ち合わせ室の照明が、机の上の紙を明るく照らしていました。Aileは三つの欄の下に、言い直すための小さな余白を作ります。



最後に、さっきの返事を二つの文に分けてみませんか。内容について伝えたいことと、言い方や進め方について伝えたいことです。



「確認が終わっていないので、来週への前倒しには賛成できない」。これが、内容について。



「それくらいと言われると、作業を軽く扱われたように感じる。残っている内容を見てから相談してほしい」。こっちは、嫌だったことと、してほしいことかな。



はい。相手が何を考えていたかを断定せずに、自分の受け止めと希望を伝えていますね。



そのあとで、相手から「確認作業をこちらで引き受けるつもりだった」と説明されたら、案の見え方は変わるかもしれない。



ええ。条件が変わったなら、考え直せます。説明を聞いても引き受けられないなら、その理由や希望を伝えてよい。最初の答えを守り抜くことだけを目標にしなくていいんです。



自分の意見を持つことと、話を聞いて考え直すことは、一緒にできるんだね。



そうですね。そして、伝え方を整えても、相手が納得するとは限りません。そのときは、合意できない点を残したまま、進め方や自分の関わる範囲を考えることになります。
今日の小さな一歩は、最近の一場面を選び、「私は、この点に同意できない」「私は、この言い方や進め方がつらかった」と、一文ずつ書いてみることです。どちらかが空欄でも構いません。相手に送るかどうかは、そのあとで決められます。



反対する理由を残したまま、強く返したところは言い直す。どちらもできると思うと、少し話しやすくなるね。



ええ。大切に扱ってほしいという願いも、自分で考えて選びたいという願いも、同じ会話に置いてよいのだと思います。
えむくんはノートの「もう少し聞かせて」の横に、「聞いたあとも、自分の意見を話していい」と書き足しました。次回は、強い言葉を向けられた側の話です。気持ちを受け止めながら、自分の意見と境界線をどう残すか。二人は、会話のもう一方に立って考えていきます。












