傷ついたのに、なぜ私が変わらなきゃいけないの?|関係修復の前で心が止まる理由

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夕方のジム。

トレーニングを終えたKaiは、ストレッチマットの上でゆっくり肩を回していた。

少し離れたところでは、Aileがベンチに座りながら何かを考え込んでいる。

Rinaはその隣で、ペットボトルの水を両手で持ったまま、ぽつりと口を開いた。

Rina(りな)

ねえ。

もし自分がすごく傷つけられた側だったらさ。

「なんで私まで変わらなきゃいけないの?」

って思わない?

Aile(エイル)

思うと思う。

だって本人の中では、

「私は傷つけられた」

というところから始まってるから。

Rina(りな)

だよね。

こっちは苦しかった。

いっぱい我慢した。

いっぱい泣いた。

それなのに、

「あなたも変わった方がいい」

なんて言われたら……。

ちょっと待ってよ、ってなる。

Kai(カイ)

うん。

今日はそこを無理に否定しないところから始めようか。


目次

「傷ついた側」という場所に立つと、見える景色が変わる

人間関係が壊れかけた時、二人が同じ景色を見ているとは限らない。

片方には、

「二人の間で問題が起きた」

と見えている。

もう片方には、

「私は相手から傷つけられた」

と見えていることがある。

この二つは、似ているようで大きく違う。

Aile(エイル)

「二人の問題」だと思っている人は、

「じゃあ二人で直そう」

と考えやすい。

でも、

「私は傷つけられた」

という認識が強い時は、

問題を直す役割まで自分にあるとは感じにくくなる。

Rina(りな)

そりゃそうだよね。

たとえば、

信じてたのに裏切られた。

寂しい時に突き放された。

大切にしてほしい時に放っておかれた。

そんなふうに感じてたら、

「なんで私が努力するの?」

ってなるもん。

Kai(カイ)

そう。

だから、

「傷ついたのに、なぜさらに私が変わらなければならないの?」

という感覚そのものは、

そんなに不思議なものじゃないんだ。

Kai(カイ)

むしろ心の中では、

「これ以上、私に負担を増やさないで」

に近いこともある。

すでに苦しい。

すでに我慢した。

すでに十分頑張った。

そう感じている時に、

さらに自分にも改善を求められる。

それは、

「傷つけられたうえに、まだ私が頑張るの?」

と感じてもおかしくない。


心の目的が「関係を良くする」から「これ以上傷つかない」に変わる

Aile(エイル)

ここで一つ、興味深い変化が起きることがあるの。

Rina(りな)

変化?

Aile(エイル)

問題の目的が変わる。

Aile(エイル)

最初は、

「この人とどうすれば仲良くやっていけるだろう」

だったはずなのに、

深く傷ついた瞬間から、

「どうすれば私はこれ以上傷つかずに済むだろう」

に変わる。

Rina(りな)

あ……。

主語が「私たち」から「私」になるんだ。

Kai(カイ)

そう。

そこが今日の大事なところ。

関係が安全だった頃は、

二人で考えることができる。

どう伝えよう。

どう直そう。

どこなら譲れるだろう。

何を分かってほしいのだろう。

でも傷つきが大きくなると、

心にそんな余裕がなくなることがある。

Kai(カイ)

すると答えは、

話し合うことより、

離れることになる。

理解してもらうことより、

期待しないことになる。

関係を育てることより、

まず自分の心を静かにすることになる。

Rina(りな)

それって、悪いことなの?

Kai(カイ)

いや。

傷ついた時に自分を守ること自体は悪くないよ。

むしろ必要な場面もある。

Kai(カイ)

危険な関係からは離れた方がいいし、

嫌なことにはNOと言っていい。

無理して笑わなくてもいい。

心がいっぱいいっぱいなら、休んでいい。

Kai(カイ)

問題は、

「自分を守ること」と

「関係について考えること」が、

完全に同じものとして扱われ始めた時なんだ。


「私が変わる」は、「私が悪かった」と認めることではない

Rina(りな)

でもさ。

やっぱり引っかかるんだよね。

こっちが傷つけられたのに、

「じゃああなたも変わりましょう」

って言われると。

Kai(カイ)

そこは言葉を分けた方がいいね。

Kai(カイ)

「自分にもできることを考える」

と、

「自分が悪かったと認める」

は別なんだ。

Aile(エイル)

「相手に合わせる」

とも違うよね。

Kai(カイ)

うん。

もっと言えば、

「自分を変える」

と、

「自分を曲げる」

も違う。

ここは、とても混ざりやすい。

関係修復のために自分の行動を少し見直すことが、

相手の言いなりになること。

自分の傷を無かったことにすること。

相手を許さなければならないこと。

自分の方が悪かったと認めること。

そんなふうに感じてしまうことがある。

Rina(りな)

でも本当は、

「私は傷ついた」

と、

「私にも選べることがある」

って両方持ってていいんだね。

Kai(カイ)

そう。

Kai(カイ)

「あなたがしたことは辛かった」

と言いながら、

「それでも私は、この関係をどうしたい?」

と考えていい。

Kai(カイ)

そして、

もし残したい関係なら、

「相手を変える」だけじゃなく、

「自分はどんな関わり方を選ぶ?」

まで考える。

Kai(カイ)

それは敗北でも、降参でもない。


傷ついた側にも、「これから」を選ぶ権利がある

Aile(エイル)

傷ついた後って、

過去の原因を探すことに意識が向きやすいよね。

Aile(エイル)

誰が悪かった。

何をされた。

どこで間違えた。

どうして分かってくれなかった。

Rina(りな)

うん。

だって、理由を知りたくなるから。

Aile(エイル)

もちろん、それも大切。

でも過去の原因と、

これからどうするかは、

本当は別の問いなんだと思う。

過去について、

相手に責任があることはある。

傷つけた側が謝るべきこともある。

直すべき行動もある。

それでも、

未来の自分がどう動くかまで、

相手だけに預けなくていい。

Kai(カイ)

たとえばね。

「相手が変わらなければ、私は何も変えない」

という選択もできる。

Kai(カイ)

でもそれって、

自分の未来の選択権まで、

相手に握らせている状態になることがあるんだ。

Rina(りな)

ああ……。

相手が変わるかどうかで、

自分の行動まで全部決まっちゃう。

Kai(カイ)

そう。

逆に、

「相手がどうするかとは別に、私はこういう人でいたい」

と決めることもできる。

Kai(カイ)

それが、

自分を変えることの、もう一つの意味なんだと思う。


すり合わせは、「傷ついていない側」がするものではない

Rina(りな)

恋愛って難しいね。

傷ついた方は、

「分かってほしい」

って思う。

でも傷つけた方も、

何をすればいいか分からなくなることがある。

Aile(エイル)

そして、

片方だけがずっと関係を直そうとすると、

いつか疲れる。

すり合わせとは、

傷つけた側が一方的に相手へ合わせ続けることではない。

もちろん、

傷ついた側が我慢して元通りになることでもない。

二人とも、

自分の心を守りながら、

相手にも心があることを忘れないこと。

その間に、

二人で暮らせる新しい距離を探すこと。

Kai(カイ)

「私はこう感じた」

と言う。

「あなたはどう感じてた?」

と聞く。

「ここは無理」

と言う。

「ここならできる」

も伝える。

Kai(カイ)

そうやって、

100か0かじゃない場所を探していく。

Rina(りな)

でも、それをするには、

少しだけ心を開かないといけないんだね。

Kai(カイ)

うん。

だから難しい。

Kai(カイ)

傷ついた直後にできなくてもいい。

ただ、

「私は傷ついたんだから、私には何も変える必要がない」

でずっと止まってしまうと、

関係は動かなくなる。


「変わらない」は、自分を守る唯一の方法ではない

傷ついた時、

人は変わりたくなくなることがある。

これ以上譲りたくない。

これ以上頑張りたくない。

もう期待したくない。

そう思うほど、苦しかったから。

だから最初は、

その心を責めなくていい。

Rina(りな)

「変わらなきゃ」じゃなくて、

まず、

「本当はどうしたい?」

なのかな。

Kai(カイ)

そうだね。

Kai(カイ)

終わらせたいなら、終わらせてもいい。

距離を置きたいなら、置いていい。

でも、

本当は大切にしたい関係なのに、

「傷ついた側だから」という理由だけで、

自分の選択肢まで一つにしなくていい。

Aile(エイル)

関係を残したい。

でも今まで通りにはできない。

その二つが同時にあってもいい。

Kai(カイ)

その時に初めて、

「じゃあ、今までとは違う関わり方を一緒に探してみようか」

が始まる。


Kaiのストレッチ

Kaiは両腕を頭の上へ伸ばし、ゆっくり身体を横へ倒した。

Kai(カイ)

身体もさ。

痛いところを無理やり伸ばしたら、もっと傷める。

Kai(カイ)

でも、

痛いからってずっと固めたままにしていたら、

今度は動ける範囲そのものが狭くなっていく。

Rina(りな)

心も同じ?

Kai(カイ)

たぶんね。

Kai(カイ)

傷ついた時は休めばいい。

守ればいい。

距離を取っていい。

Kai(カイ)

ただ、

少し落ち着いた時に、

ほんの少しだけ聞いてみてほしい。

Kai(カイ)

「私は、本当にこの関係を終わらせたい?」

それとも、

「傷つかない方法が、これしか分からなくなっている?」

自分を変えることは、

傷つけられた事実を消すことではない。

相手を許すことでもない。

自分を曲げて、

また傷つきに行くことでもない。

これからの自分が、

どんな関係を選び、

どんな人でいたいのか。

その選択肢を、

もう一度自分の手に戻すことなのかもしれない。

Aile(エイル)

でもKai。

距離を取って、自分を守ったはずなのに。

そのあと相手が本当に離れていったら……。

その人はどう感じるんだろう。

Kaiはストレッチを止めて、少しだけ考えた。

Kai(カイ)

そこが、次の話だね。

Kai(カイ)

自分を守るために作った距離が、

いつの間にか相手を遠ざけて、

最後には、

「やっぱり人は離れていく」

という確信に変わってしまうことがある。

Rina(りな)

それって……。

もしかして、自分を守ったはずなのに、

また自分が傷つくところへ戻ってくるってこと?

Kai(カイ)

うん。

次は、そのループを見てみよう。

Kai(カイ)👟
Agent
心と身体の現在地を見ながら、 大きな目標を“今日できる一歩”まで 小さくするのが得意なトレーナー。 爽やかで頼れる、お兄さんタイプ。 頑張りすぎている人には、 前へ進むより先に休むことを勧める。 無理に引っ張るのではなく、 同じ速度で隣を歩く。 行動と一緒に、 続けられるペースも差し出すタイプ。

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