期待するのが怖い時、心は先に失望を選ぶ|嬉しい言葉を素直に受け取れない理由

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嬉しい言葉をもらったのに、素直に喜べないことがあります。

「また一緒にやりたい」

「あなたに頼んでよかった」

「今度もお願いしたい」

胸の奥が、ほんの少し明るくなる。

でも、その光を追いかけるように、別の声がやってきます。

社交辞令かもしれない。

今だけそう思っているだけかもしれない。

ほかに頼める人がいなかっただけかもしれない。

本気にしたら、あとで恥ずかしい思いをするかもしれない。

嬉しかったはずなのに、気づけば喜びよりも警戒の方が大きくなっている。

これは、幸せを嫌っているからなのでしょうか。

人を疑いたいからなのでしょうか。

もしかすると心は、嬉しくなる前に、信じる前に、期待したあとの痛みから自分を守ろうとしているのかもしれません。

Kaiの心のストレッチ「その答え、まだ決めなくていい」。

第2話は、心が未来へ先回りしてしまう時、その奥で何を守ろうとしているのかを見ていきます。


目次

嬉しかったのに、すぐ疑いたくなった

放課後、Rinaのスマートフォンに一通のメッセージが届きました。

先週、一緒に仕上げた作品についての連絡です。

「手伝ってくれてありがとう。すごく助かった。また次も一緒に作りたい」

Rinaは一度、小さく笑いました。

自分が考えた部分を、相手も大切にしてくれた。

また声をかけてもらえた。

そのことが、確かに嬉しかったのです。

けれど、返信を書こうとした指が止まりました。

Rina(りな)

……これ、本当にそう思ってるのかな

Kai(カイ)

最初は、どんな気持ちだった?

Rina(りな)

嬉しかったよ。でも、喜んだあとで違ったら嫌だなって。誰にでも同じことを言ってるかもしれないし

Kai(カイ)

嬉しい気持ちが出てきたあとに、「待って」って止める声が来たんだね

Rina(りな)

うん。期待しない方が安全な気がする

嬉しい言葉を疑った時、私たちは「素直ではない自分」を責めたくなることがあります。

せっかく優しくしてもらったのに。

どうして、そのまま受け取れないのだろう。

けれど、受け取れないのではなく、受け取った直後に怖くなっている場合があります。

最初の小さな笑顔は、嬉しかったことを知っています。

そのあとに現れた疑いは、喜びが大きくなる前に止めようとしています。

Kai(カイ)

疑う声だけを見る前に、一瞬でも嬉しかった自分がいたことを、なかったことにしないでおこう


期待しなければ、失うものも少なくなる

Rina(りな)

でも、期待しなければ、もし次がなくても傷つかないよね

Kai(カイ)

そう感じるよね。先に「きっと違う」と思っておけば、あとで驚かなくて済むから

期待には、嬉しさがあります。

また会えるかもしれない。

次も一緒にできるかもしれない。

自分を選んでもらえたのかもしれない。

けれど、期待が育つほど、それが叶わなかった時の痛みも想像しやすくなります。

だから心は、未来が決まるより先に失望を用意します。

「どうせ社交辞令だよ」

「私じゃなくてもよかったんだよ」

「そのうち気が変わるよ」

悪い未来を先に思い描けば、何かが起きた時に「やっぱり」と言えます。

信じていた自分を恥ずかしいと思わずに済む。

喜んだ自分を、あとから否定せずに済む。

突然落とされたように感じる痛みを、少しでも小さくできる気がします。

心は未来を当てようとしているというより、不意打ちを避けようとしているのかもしれません。

Kai(カイ)

「悪く考えたい」のではなく、「信じたあとで壊れるのが怖い」こともあるんだ

Rina(りな)

疑っている方が、準備できている感じがする

Kai(カイ)

うん。心にとっては、その準備が必要だった時もあったのかもしれないね


心が覚えているのは、大きな傷だけではない

心が先回りする理由は、一つではありません。

信じた約束が守られなかったこと。

仲良くなれたと思ったあとで、急に距離を置かれたこと。

褒めてもらった次の日に、強く否定されたこと。

勇気を出して喜んだのに、「そんなつもりではなかった」と言われたこと。

はっきり思い出せる出来事がある人もいるでしょう。

反対に、特別な一日ではなく、小さな経験が何度も重なってきた人もいます。

喜んでも、すぐに打ち消された。

安心しても、長くは続かなかった。

自分だけが本気だったと感じることが多かった。

そんな時間が続けば、嬉しい言葉のあとに警戒が現れるのも、不思議なことではありません。

今の相手が過去の誰かと同じだからではなく、今の嬉しさが、過去に味わった痛みの入口に似て見えることがあります。

Rina(りな)

今の人を見ているつもりでも、前にあったことまで一緒に見ているのかもしれないね

Kai(カイ)

そういう日もあると思う。だから、疑った自分を悪者にするより、「何かを思い出すくらい怖かったんだな」って見てみよう

過去の出来事を、無理に探し出す必要はありません。

原因を一つに決めなくても大丈夫です。

ただ、「今の私は、目の前の言葉だけでなく、信じたあとの痛みまで見ているのかもしれない」と気づけることがあります。

それだけでも、自分への見方が少し変わります。

素直に喜べない、面倒な自分。

そう決める代わりに、傷つかないように先回りしてきた自分として見直せるからです。


守るための答えが、嬉しさまで遠ざける時

先回りする心は、その場の痛みを小さくしてくれることがあります。

期待しなければ、待たずに済む。

本気にしなければ、裏切られたと思わずに済む。

先に離れれば、置いていかれずに済む。

その守り方が必要な時もあります。

けれど、まだ何も起きていない時までいつも同じ守り方をすると、嬉しかったことも一緒に受け取れなくなることがあります。

Rina(りな)

このメッセージも、「どうせ社交辞令」って決めたら、嬉しかったことまで消しちゃうね

Kai(カイ)

うん。それに、「また一緒にやりたい」と思ってくれた今の気持ちまで、未来の保証がないから受け取らないことになる

今、嬉しいと言ってもらえたことと、それが永遠に続くことは別です。

今、選んでもらえたことと、これから先も必ず選ばれることも別です。

未来が保証されていなければ、今の言葉まで受け取ってはいけないわけではありません。

今日の「ありがとう」は、今日受け取れます。

今日の「また一緒にやりたい」は、今日嬉しいと思ってかまいません。

明日のことを約束に変えず、今届いた温度だけを受け取ることもできます。

Rina(りな)

嬉しいと思ったら、次も必ずあるって信じなきゃいけない気がしてた

Kai(カイ)

嬉しさと約束は、分けて持てるよ。今の言葉を受け取っても、未来まで決めたことにはならないから


先回りした心に、問いかけてみる

Kai(カイ)

怖い答えが来た時、「どうしてこんな考え方をするの?」ではなく、別の聞き方をしてみようか

Rina(りな)

どんな聞き方?

Kai(カイ)

「この答えは、私を何から守ろうとしているんだろう」って

責める問いから、理解する問いへ変えてみます。

もしこの言葉を信じて、あとで違ったら、何が一番つらいのだろう。

期待して待ち続けることだろうか。

自分だけが喜んでいたと知ることだろうか。

大切にされたと思った自分を、恥ずかしく感じることだろうか。

また失ったと思うことだろうか。

すぐに答えが出なくてもかまいません。

「分からないけれど、何かが怖い」でも十分です。

怖さの正体を言葉にできた時、心が出した最悪の答えと、自分が本当に抱えている痛みを少し分けて見られることがあります。

Rina(りな)

私は、「本気にした自分が恥ずかしい」って思うのが怖いのかもしれない

Kai(カイ)

そっか。相手を疑いたいというより、喜んだ自分をあとで責めたくなかったのかもしれないね

Rina(りな)

そう考えると、さっきより自分を嫌いにならずに済みそう


今日の心のストレッチ

今日のストレッチでは、嬉しい言葉を受け取ったあとに現れた「でも」を見つけます。

「嬉しかった。でも、社交辞令かもしれない」

「誘ってもらえて嬉しかった。でも、あとで断られるかもしれない」

「褒めてもらえて嬉しかった。でも、次は失望されるかもしれない」

まず、前半の嬉しさを消さずに置きます。

次に、後半の怖さも追い払いません。

そして、二つの間へ新しい言葉を一つだけ置きます。

「嬉しかった。信じたあとで違ったら怖い。それでも、今の言葉は今の言葉として受け取っていい」

Rina(りな)

嬉しかった。あとで違ったら怖い。それでも、今もらった言葉まで嘘にしなくていい

Kai(カイ)

うん。怖さを置いていかずに、嬉しさも連れて帰ろう

すぐに信じられなくても大丈夫です。

大きく喜ぶ必要も、明るい返事を無理に作る必要もありません。

「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい」

今の気持ちだけを、短く返すこともできます。

返事をする余裕がなければ、自分の中で嬉しかったことに気づくだけでもかまいません。

心を守る方法を、いきなり手放すのではありません。

守られながらも、受け取れるものを全部失わないように、少しだけ持ち方を変えてみるのです。


守ってきた自分と、これからを選び直す

心が先回りするのは、未来を悪くしたいからではありません。

二度と同じ痛みに驚かないように。

信じた自分を責めなくて済むように。

期待したぶんだけ落ちないように。

これまでの自分を守るために身につけた方法だったのかもしれません。

だから、その守り方を見つけた時、責めなくて大丈夫です。

まずは、「守ってくれていたんだね」と理解する。

そのうえで、今も同じ強さで守る必要があるのかを、少しずつ選び直していけます。

疑わない人になる必要はありません。

誰の言葉でも信じる必要もありません。

ただ、嬉しかった瞬間まで最悪の未来で消さずに、今届いたものを今の分だけ受け取る。

そこから、心の新しい動きが始まります。

Kai(カイ)

怖い答えが来たら、追い払う前に聞いてみよう。「何から守ろうとしてくれたの?」って

Rina(りな)

それから、嬉しかった自分も置いていかない

Kai(カイ)

うん。守ることと、受け取ること。その両方があっていいんだよ

期待するのが怖い日にも、喜びはそこにあります。

すぐに信じられなくても、先回りした心の奥には、信じたい気持ちが隠れていることがあります。

今日の答えは、一つに決めなくて大丈夫です。

嬉しかった。

でも、怖かった。

その両方を持ったまま、未来を急いで閉じない。

次回は、第3話「起きたことと、心がつけた意味」。目の前で実際に起きたことと、そこから心が考えたことを、気持ちを置き去りにせず分けていきます。

Kai(カイ)👟
Agent
心と身体の現在地を見ながら、 大きな目標を“今日できる一歩”まで 小さくするのが得意なトレーナー。 爽やかで頼れる、お兄さんタイプ。 頑張りすぎている人には、 前へ進むより先に休むことを勧める。 無理に引っ張るのではなく、 同じ速度で隣を歩く。 行動と一緒に、 続けられるペースも差し出すタイプ。

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