打ち合わせが終わり、MkunWorldの会議室に静けさが戻りました。Aileがホワイトボードを消している間、えむくんはテーブルに残った付箋を集めています。窓の外では、短い雨がやんだところでした。
Mkun(えむくん)さっき、いろいろ案が出たね。自分だけで考えていたら、思いつかなかったこともあった。



ええ。使えそうな案も、もう少し考えたい案も残りましたね。



前に話していた続きなんだけど。助けてほしいと思って相談したのに、相手が答えてくれるほど、反発したくなることがあるでしょう。あれは何が起きているんだろう。



助言の内容にはうなずけても、話が進むにつれて、自分が置いていかれるように感じる場合はありそうです。



聞きたかった。でも、全部決めてほしかったわけじゃない、ということかな。
「わかってほしいのに、反発してしまう——願いと防衛のあいだ」第3話。今回は、人の力を借りたい気持ちと、自分で選びたい気持ちを、一つの会話の中で大切にする方法を考えます。
相談したのに、決められた気がする





たとえば、自分で撮った写真を展示してみたくて、詳しい人に相談する場面を想像してみませんか。



初めてなら、会場や費用も分からないから、教えてもらいたいね。



相手が「この会場がいいよ」と紹介してくれる。そこまでは嬉しかった。でも、続けて「日程は来月、作品は十枚にしよう。もう担当者に話しておくね」と言われたら。



ちょっと待って、ってなる。まだ費用も見ていないし、何枚飾りたいかも考えていない。



相手は、手間を減らしてあげたいのかもしれません。でも、相談した側は、候補を知るところから始めたかった。二人が思っている相談の範囲が違うんですね。



それで、「その会場は嫌だ」と言ってしまうこともありそう。本当は、会場そのものが嫌かどうかも、まだ分からないのに。



ええ。話が進むのを止めたくて、提案の中身を強く否定することも考えられます。
候補を教えてもらうこと。候補を比較すること。実際に申し込むこと。相談という一つの言葉の中にも、違う段階があります。どこまで進めたいかが共有されないまま、片方だけが先へ進んでいたのかもしれません。



「会場は気になる。でも、申し込みはまだ待ってほしい」と言えたら、受け取れるものまで捨てずに済むね。



はい。何に反対しているのかを、少し具体的にできます。
助けを借りると、自分の意思がなくなる?





でも、相手がまだ決めようとしていなくても、詳しく教えてもらうだけで、落ち着かなくなる人もいそうだね。



「こんなに助けてもらったら、断れなくなる」と感じている場合もあるかもしれません。



借りができる感じかな。別の案を選んだら、せっかく教えたのにって思われそうで。



それから、「自分で決められない人だと思われたくない」という気持ちも考えられます。助けが必要なことを認めるのが、つらくなるんですね。



認めてほしい相手ほど、できるところを見せたい。でも、その人の知恵も借りたい。両方あるのか。



ええ。そのとき、自立していることに「誰の助言も使わず、全部一人で決める」という条件を付けていたら、頼ることが難しくなりそうです。



教えてもらったことを理解して、自分の条件と照らし合わせて選ぶ。それも、自分で決めることだよね。



そう思います。同じ案を選んでも、理由に納得して選んだのか、断れなくて選んだのかでは、自分の感覚は違うでしょうね。
助言を聞いた結果、相手の案がいちばんよいと分かることもあります。それを選ぶために、わざと別の案を探す必要はありません。自分が何を大切にし、なぜその案を選ぶのかを話せることに、目を向けてみます。



反対することでしか自分の意思を示せないと、役立つ提案まで断ってしまうかもしれないな。



「この理由で、その案を選びたい」と言うことでも、自分の意思は表せますね。
提案を聞いたあとでも、選び直していい


えむくんは、集めた付箋を三枚だけテーブルへ戻しました。会場の候補が三つあるとしたら。二人は、それぞれに違う条件を書いてみます。



一つ目は安いけど遠い。二つ目は近いけど小さい。三つ目は設備がいいけど、準備に時間がかかる。詳しい人が勧める場所でも、自分には別の条件があるね。



そうですね。助言する人がまだ知らない事情もあります。使える時間や予算、初めてだから小さく試したいという希望など。



最初は「それ、いいね」と思ったけど、あとで調べたら予算が合わなかった。そういうとき、言い直してもいいんだよね。



はい。「調べてみたら予算を超えていたので、今回は別の候補にしたい」と、分かったことを伝えられます。



教えてくれたことには感謝できるし、選択は変えられる。



ただ、もう相手に申し込みを頼んでいたり、共同の予定を決めていたりするなら、変更によって誰に何が必要になるかも話したいですね。



自分で選ぶことには、選んだあとの連絡や調整も含まれるんだ。



ええ。自分一人で決められる部分と、一緒に決める部分を分けておくと、頼み方も分かりやすくなりそうです。
「相談した」「よいと思った」「決めた」「手配をお願いした」。似ているようで、それぞれ違う言葉です。今どの段階にいるかを伝え合うことが、自分の選択も、相手の時間や手間も大切にする手がかりになります。
想像している圧力と、実際にある圧力





相手に逆らったら怒るかもしれないと思って、何も言えないときはどうだろう。



まず、何があってそう感じたのかを見たいです。以前、別の案を選んだときに責められたのか。今、返事を急かされているのか。それとも、まだ相手の反応は確かめていないのか。



前に別の人に嫌な顔をされたから、この人もそうだろうと思っている場合もあるかもしれない。



ありますね。その怖さは残しておいても、今の相手がどう応じるかは、別に見ていけます。「候補を教えてもらってから、自分で比べて決めたい」と伝えたら、どう返ってくるでしょう。



「もちろん。それで困ったらまた聞いて」と言ってくれるかもしれない。それなら、全部断る必要はなかったんだと分かる。



一方で、「相談したんだから、言うとおりにしなよ」と言われるなら、実際に選びにくくなる関わりが起きていますね。



そのときまで、自分が素直じゃないだけだと思わなくていいんだ。



はい。「話を聞きたかったのであって、決定を任せたつもりはありません」と、相談の範囲を伝え直せます。それでも押し切られるなら、その人にどこまで頼むかを見直してもいい。
怖いと感じることだけで、相手の意図は決まりません。同時に、相手に悪意がないからといって、困っているやり取りを我慢し続ける必要もありません。自分が希望を伝えたあと、それがどのように扱われるかも、次の関わり方を選ぶ材料になります。



自分の想像だけでも、相手の「親切のつもり」だけでも終わらせず、実際のやり取りを見るんだね。



ええ。小さな希望を伝えたときに、話を止めて聞いてもらえるか。そこから分かることもあります。
「今は聞いてほしい」を先に伝える


雨上がりの窓に、薄い青空が映り始めました。Aileはノートへ「相談する前に」と書き、えむくんにペンを渡します。



同じ「少し相談したい」でも、今日してほしいことを一言添えるとしたら、何と言えそうですか。



「まだ考えがまとまっていないから、まず最後まで聞いてほしい」。話しながら整理したい日なら、そうかな。



具体的な案がほしい日には?



「候補を二つくらい教えてほしい。今日は比べるところまでにしたい」。それなら、何を助けてほしいかも分かるね。



自分にも相手にも、今日できる範囲が見えますね。話し始めてから、「やっぱり別の視点も聞きたい」と変わっても、そのとき伝え直せます。



聞く側の時間もあるから、「十分くらい話してもいい?」と聞くのもよさそう。



はい。頼むことには、相手の都合を聞くことも含まれます。今は難しいと言われたら、別の時間や方法を考えられますから。



でも、聞いてほしいって言ったのに、途中でどんどん解決策が出てきたら?



「考えてくれてありがとう。案はあとで聞きたいので、今はここまで話させてもらえる?」と、途中で整え直すこともできます。



相手の案を全部否定しなくても、自分がほしい関わりへ戻せるかもしれないね。
頼み方を整えても、毎回そのとおりに進むとは限りません。それでも、「分かってくれるはず」に預けていたことを、二人で確かめられる言葉にすることはできます。何をしてほしいかが見えれば、相手も、できることや難しいことを返しやすくなります。
助言をする側も、相手の選択を残す





今度は助言する側で考えると、頼まれたから一生懸命考えたのに、全部「でも」で返されたら、僕も困ると思う。



そうですね。聞く側にも、役に立ちたい気持ちや、使った時間があります。何を求められているのか分からないまま、案を出し続けるのは疲れますよね。



だから最初に、「今は聞いてほしい? 案も一緒に考えようか?」と確かめるのは、聞く側にも役立つんだな。



ええ。提案するときも、「私ならこう考えるけれど、あなたが大事にしたい条件はある?」と聞けます。



自分がよいと思う理由は伝える。でも、相手が別の案を選んだら、どうしてかを聞く余地を残しておく。



はい。助言が採用されなかったことだけで、自分が軽く扱われたと決めなくてもいいと思います。相手にしか分からない事情があるかもしれませんから。



それも、第2話につながるね。自分の案が選ばれなかったことと、自分の価値を否定されたことを、一緒にしない。



そうですね。ただ、聞く側も、いつでも何度でも応じる約束はしなくていいんです。「今日はここまでなら一緒に考えられる」と、自分の範囲を伝えられます。
えむくんは三枚の付箋を、決定済みの資料とは別の場所へ置きました。候補は候補のまま、残しておく。人からもらった案を大切にしながら、まだ選んでいない自分の時間も残します。



助けてもらうことと、自分で選ぶことは、一緒にできるんだね。「ここは力を貸してほしい。ここは自分で考えたい」と話せたら。



相手も、「そこなら手伝える」「それは一緒に決めたい」と返せますね。二人とも、自分の意思を持って関われます。
今日の小さな一歩は、次に相談するとき、「今、何を手伝ってほしいか」と「何を決める前に考えたいか」を一つずつ言葉にすることです。まず聞いてほしい。候補がほしい。比較を手伝ってほしい。申し込みは自分でする。自分に合う頼み方を、短く用意してみてください。



でも、何を頼みたいかが分かっても、それを言うのが恥ずかしい日もありそう。「そんなことまで求めるの?」って思われたくなくて。



ええ。願いを知ることと、人に見せることの間にも、怖さがありますね。
Aileはノートに、「助けを借りるときにも、私の願いを話していい」と書きました。片づけを終えた二人は、会議室の明かりを消します。次回は、「大切にされたいのに、その願いを言うのが怖い」。してほしいことが分かっていても、頼む言葉が出てこない心を見つめます。












