えむ:
条件付きの愛でした。
条件付きの愛は、始まりは無条件です。
最初はとても優しい。
否定もない。
受け入れてくれる。
だから、人は安心します。
そして――
「この人が大好きだ」と、自分の中で認定した瞬間から、
少しずつ行動が変わります。
条件提示。
確認。
嫉妬。
それは命令ではありません。
お願いでもありません。
ただの、不安です。
不安を相手に預けると、
ロープが一本ずつ増えていきます。
気づかれないように。
優しさの顔をしたまま。
ぐるぐると。
えむ:
やがて、依存させるための鍋に入れます。
火加減は弱め。
急に煮立てることはしません。
「温めているだけ」
そう思っているからです。
外の世界は少しずつ遠ざかり、
選択肢は減り、
鍋の中が一番安全になります。
煮詰めるほど、
相手は柔らかくなります。
ロープを切っても、
もう解けません。
Aile:
この工程は、特別なものではありません。
何度も観測されています。
えむ:
理想の味付けで完成です。
とっても、
プルプルで、
ほろほろで、
柔らかい。
Aile:
肉の妖艶な柔らかさ。
それが罠だと知っていても──
その感触を一度知ってしまった男は、
なかなか鍋の外に戻れない。
観測日誌

